「新自由主義・グローバル資本主義」は下火に

ポストコロナの時代に予想される第1のグローバルな構造変化は、資本主義の変容、すなわち「利益至上主義からSDGsを中心に据えた資本主義へ転換」である。

2000年代に入り加速した、株主の近視眼的な利益だけを過度に重視する「新自由主義・グローバル資本主義」が大きな転換点を迎え、中長期的により持続可能性が高い、従業員や顧客、取引先、地域社会、地球環境、将来世代などさまざまな側面にバランスよく目配りをした「ステークホルダー(利害関係者)資本主義」が主流になると考えている。

一口に資本主義といっても、米国に代表される「アングロサクソン型」、ドイツに代表される「ライン型」、「日本型」といったさまざまなタイプが存在するが、ポストコロナの時代には、こうした資本主義のさまざまなタイプが、ひとつの方向に収斂していく。現状、各国が抱える課題はさまざまだが、その行き着く先には、多様なステークホルダーが対話を通じて持続可能性の高い価値を創造する、新たな資本主義の姿が想定される。

そのなかで、中核的な役割を果たすことが期待されるのが、SDGs(Sustainable Development Goals)である。SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの「持続可能な開発目標」を指す。

SDGsの最大の特長は、「未来のあるべき姿(理想像)」を掲げた上で、「バックキャスティング」的な思考で、そこから逆算して、現在なすべきことを考える点にある。この思考法は、現在を起点に、現在の延長線上に想定される未来を考える「フォアキャスティング」的な思考とは根本的に異なっている。

そのため、SDGsで掲げられた17のゴールと169のターゲットは、社会的課題の解決に取り組む多くの企業にとって、経営の羅針盤のような役割を果たすことになる。