「強姦かどうか、すなわち女性の同意があったかどうかは、犯行の時刻や場所、周囲の状況、犯行に至る経緯や具体的プロセス、女性の年齢や立場、性体験の多寡などによって総合的に判断されます。これさえ満たせば和姦になるという絶対的な条件はないと考えたほうがいい」(同)

かつては和姦を示した有力な証拠が、最近は通用しなくなりつつあることにも注意したい。

「以前は行為が行われた場所がラブホテルなら、女性を担いで連れ込んだという状況でもないかぎり、お互い合意のうえの性行為だったと認められやすかった。ところが最近はラブホテルでも強姦罪に問われるケースが増えてきました。なかにはホテルから駅まで2人で談笑しながら歩いて帰ったのに告訴されたケースもありました」(同)

男性が勝手な思い込みをやめて女性の意思を慎重に確認すれば、強姦事件は起きないのだろうか。答えはノーだ。仮に女性が明確に合意の意思を示したとしても安心はできない。強姦事件の被害者の中には、示談金狙いの美人局や、夫や恋人に浮気がバレて、それをごまかすために「無理やりレイプされた」と嘘をつく女性もいるからだ。

強姦罪は親告罪の一つで、被害者の告訴があってはじめて起訴できる。親告罪の告訴期間は犯人を知ってから6カ月以内だが、2000年の刑事訴訟法改正で性犯罪についての告訴期間が撤廃された。つまり数年前の“一夜の過ち”をネタに、いきなり訴えられる可能性もあるのだ。男性はこうした訴えから、身を守る術はあるのだろうか。

「行きずりの人とは情交を持たないことが一番の予防です。性病のリスクを考えて不特定多数との行為を避ける人は多いかもしれませんが、法的な意味でも不特定多数との行為を避けることは重要」(同)

ただ、旧知の間柄でも注意は必要だ。夫婦間で強姦罪が成立した判例があるように(鳥取地裁 昭和61年12月17日)、行きずりのセックスでなくても訴えられるリスクは残っている。

「普段から付き合いのある関係なら、好意を寄せられていることを示すメールや写真があるはず。それらが残っていれば、万が一のとき自分の身を守ってくれることもあります」(同)

(ライヴ・アート=図版作成)