駐車する場所を探していたら、ようやく空いているパーキングメーターを発見。ところが路面には「荷捌き用」と大きな文字が書かれている。駐車していいのかどうか迷った経験のある人は多いはずだ。

東京都内では、2002年から商業地域を中心に「貨物車用」「荷捌き用」と表示されたパーキングメーターが出現。道路交通法改正で駐車違反の取り締まりが強化された06年以降、さらに貨物車用をよく見かけるようになった。柏木利博弁護士は、その背景をこう語る。

「駐車違反の取り締まりが厳しくなると、配達などの業務で一時的に車を停めざるをえない物流業者は仕事になりません。そうした物流業界からの要望を受けて、貨物車用パーキングメーターの設置が促進。貨物車用が商業地域や物流のサテライトセンターの近くに多く設置されているのも、そのためです」

荷物を納品するために数分間離れるだけでも違反キップを切られかねない物流業者の気持ちはよくわかる。ただ、トラックにとって便利な場所は、一般ドライバーにとっても魅力的な駐車スペース。もし「貨物車用」の表示を無視して普通の乗用車が駐車したらどうなるのか。

実は違反になるかどうかは一概に言えない。道路交通法では、時間を限って例外的に駐車できる場所について、「公安委員会は、(中略)時間制限駐車区間における駐車の適正を確保するため、パーキング・メーター又はパーキング・チケット(中略)を設置し、及び管理するものとする」(49条第1項)と定めている。公安委員会は一般に馴染みのない組織だが、都道府県警察を管理監督するための行政委員会で、各都道府県に設置されている。パーキングメーターに関しては公安委員会がそれぞれ独自に決定を下すため、乗用車が貨物車用に停めた場合の取り決めも、都道府県によって異なるのだ。

では東京都の場合はどうか。結論から言えば、乗用車が貨物車用パーキングメーターに停めても、駐車違反にはならない。

「貨物車用や荷捌き用の表示は、貨物トラックが停められるように配慮してほしい、という警察からのお願いにすぎません。乗用車だからという理由で違反キップを切られることはありません」(柏木弁護士)