全国大会の中止は3年生の未来に影響する

夏の甲子園だけでなく、インターハイ(全国高校総体)、それから文化系部活動も今夏に開催予定だった全国大会が軒並み中止になっている。いまだ休校が続いている地域もあり、この厳しい現実を受け止めざるを得ないだろう。ただし、スポーツでの可能性と限界を見極めるためにも、高校3年生には何かしらの“ゴール”が必要ではないだろうか。

なぜなら高校でスポーツに区切りをつける人が多いからだ。大学や社会人、もしくはプロでスポーツを継続できるのか。自分にその可能性があるのか。全国大会へと続く道のなかで、自問していくことになる。その機会が失われてしまうことは、3年生の未来に影響する。

従来のような全国大会は無理でも、自分はどこまでできるのかが見極められる実践の場を大人たちがつくっていかなければいけないだろう。

「高校生のやる気を食い物に」「高野連はリスクとるべき」

5月21日放送の情報番組「とくダネ!」(フジテレビ系)で、社会学者の古市憲寿氏が、「甲子園、これ絶対無理だと思いますか?」と尋ねる場面があった。その後、古市氏は続けた。

「本当にちゃんと大人が頭をひねったかっていうことがすごい疑問です。甲子園ってある意味、高校生のやる気を食い物にしたイベントだったわけじゃないですか。高校生にギャラも払われず、高校生たちを使ってきたイベントで、それに対して今、大人側が本当に高校生に向き合ってきたのかなってちょっと疑問だなって思っちゃいましたね」

大阪府の吉村洋文知事も夏の甲子園中止について、5月20日、府庁で記者団を前に「僕自身はやってほしかった。高野連はリスクをとるべきではないか。考え直してほしい」と再考を求めている。

日本高野連は無観客での開催なども視野に入れて慎重に検討を進めてきたが、準備期間が十分に確保できず、8月上旬までに代表校がそろうのは困難と判断。さらに宿泊、長距離移動による感染リスクが高まることを懸念している。

日頃、子どもたちに「あきらめるな」といっている大人たちが、早々とあきらめている現実に対して、高校生は何を思うだろうか。筆者も古市氏や吉村知事と同じ感覚だ。例年通りの開催は無理でも、「やれる可能性」を探ることで、全国規模の大会もできるのではないかと思っている。

使い込まれた野球ボール
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

こんなプランはどうだろうか。

各地方大会で例年通り1校の代表(優勝)校を決める。試合は週末のみで、移動のリスクを減らすために、まずは地域ごとで戦う方式を採用する。その後、全国大会として、代表校は週末に近くの都道府県の代表校と、甲子園ではなく近隣の球場を使用するというプロセスだ。

週末ごとに各地で試合を行うことで大会期間は長くなるが、移動や宿泊は最低限で済む。コロナの収束と球場スケジュール次第では、ベスト8くらいからは甲子園でもプレーできるかもしれない。