新聞人の風上にも置けない軽蔑すべき人物

「関係者」とぼかされているが、仮に産経新聞社員だとすれば新聞人の風上にも置けない軽蔑すべき人物である。取材者にとって最も大事なことは「取材源の秘匿」である。私たち読者は新聞記者が守ってくれることを固く信じて情報を提供する。内部告発を行い、社会や組織の不正を直そうと試みる。

それどころか、今回は「取材先の検事長と賭けマージャンをする」という情報が、外部の週刊誌に筒抜けだった。産経新聞が「情報源秘匿の原則」を重視するというなら、なぜ情報が漏れたのか、どういうルートで伝わったのかということを詳しく検証する必要がある。そうでなければ読者の信頼を取り戻すことはできないだろう。

朝日社説は「公訴権をほぼ独占し、法を執行する検察官として厳しい非難に値する。辞職は当然だ」としたうえで、こう書いている。

「マージャンには、記者時代に黒川氏を取材した朝日新聞社員も参加していた。本日付の朝刊にこれまでの調査の概要を掲載し、おわびした。社員の行いも黒川氏同様、社会の理解を得られるものでは到底なく、小欄としても同じ社内で仕事をする一員として、こうべを垂れ、戒めとしたい」

不祥事の謝罪をした後、政権批判をしても説得力がない

「おわび」とは、岡本順・執行役員広報担当の「新型コロナ感染防止の緊急事態宣言中だったこととあわせて社員の行動として極めて不適切であり、皆さまに不快な思いをさせ、ご迷惑をおかけしたことを重ねておわびします」というコメントだろう。

これは産経新聞のおわび記事に比べると、紙面での扱いはあっさりしていて小さい。関係した社員の人数に比例しているのかと勘ぐってしまう。

朝日社説は「こうべを垂れた」後、こう続ける。

「そのうえで、今年1月以降、黒川氏の処遇をめぐって持ちあがった数々の問題や疑念が、この不祥事によってうやむやにされたり、後景に追いやられたりすることのないよう、安倍政権の動きを引き続き監視し、主張すべきは主張していく」

安倍晋三首相を嫌う朝日社説らしいが、自社の社員の不祥事の謝罪をした後、手のひらを返すように矛先を安倍政権に向けても、あまり説得力がない。今後、当面の間、朝日は苦しい立場にあるだろう。