タピオカ屋も韓流ショップもマスク屋に転身

4月27日月曜日の夕方。若い女性や外国人で普段はにぎわっている大久保通りが、今日は寂しいくらい歩きやすい。はやりのグルメや韓国コスメ、韓流グッズなど、観光地としても名高い新大久保の売りはいくらでもあるはずだが、今は何よりもマスクが目玉商品だ。薬局はもちろんのこと、コスメショップ、韓流ショップ、韓国料理店、スーパー、タピオカ店まで、店頭にマスクがおかれている。見渡す限り“マスク屋”で、大久保通りは“マスク通り”と化していた。

韓国コスメショップで山積みになったマスクをまじまじと眺めていると、店員の韓国人とみられる女性に声をかけられた。「お姉さんのマスク、ちょっと薄いよ。買っていきなよ」とオススメされたのは、ウイルス99%カットと明記された1箱50枚入り3800円のマスク。

「一番売れているのはコレよ。今日は段ボール3箱分もまとめ買いした人がいたね。会社で使うって。自分で試して質を確かめてから、たくさん買うみたい」

マスク、実はもうあまり売れなくなった

これだけ全国的にマスクの品薄状態が続いているのだ。売れ行きはさぞ伸びているのだろう。と思いきや、実はそうでもないという声が聞こえてきた。

「今日の売れ行きは良くないよ。置いてある在庫の10%も売れてない。土日も暇だった。24日の金曜までは売れてたんだけど」

別の店のバングラデシュ人の男性は、ため息混じりにそう教えてくれた。その店はカバンなどを取り扱っているらしいが、店頭にはズラリとマスクの箱が並んでおり、ぱっと見「マスク屋」だ。バングラデシュ人の男性はもともと渋谷のお好み焼き屋さんで働いていたそうだが、コロナの影響で店が休業し、失業してしまった。そこで“カバン屋”を経営する兄に相談して、この店を手伝うことになったという。

マスクの箱を机に積んで販売する、”カバン屋”のバングラデシュ人男性。
筆者撮影
マスクの箱を机に積んで販売する、“カバン屋”のバングラデシュ人男性。

「ここは貸店舗なので、一日3万円の家賃を払っている。ただ人通りもほとんどなくて何も売れない。赤字だよ。3カ月前に貸店舗を予約した時は、こんなことになると思ってなかったよ。マスクは、何か売れる商品を入れなきゃと思って、社長が急遽きゅうきょ中国から入手したんだ。でも、マスクを売り始めたお店が増えてきて、お客さんが少なくなってきた」