そもそも国と自治体が不安定なのに、公務員が安定なわけない

「公務員は安定している」論が嘘であることを明らかにしつつ、今どき公務員を選ぶ若者の気持ちを代弁することにしよう。読んだ後には、公務員を目指す若者の未来よりも、自分の未来が不安になることだろう。

「公務員は安定している」と言われる。が、現実はそうではない。その安定の前提となる、国や自治体が揺らいでいるからだ。

深刻なのが、地方自治体である。「東京一極集中の解消」「地方創生」が叫ばれ続けている。ただ、現実的に「地方消滅」のリスクが大きい。元岩手県知事、元総務相であり現日本郵政代表執行役社長の増田寛也氏による『地方消滅』(中央公論新社)がベストセラーとなった。このテーマは他にもヒット作が多い。それだけこの問題に注目が集まっている。日本の今、そこにある問題だ。

少子化対策や、外国人労働者の拡大などが叫ばれるが、人口減少社会は現実のものとなっている。『年収は「住むところ」で決まる』(エンリコ・モレッティ/プレジデント社)がベストセラーになったが、世界的に都市部に人口が集中する流れになっている。

増える、キャリア官僚に「なりたくない」東大生

島根県が大正時代の人口を割り込んだ件や、北海道の夕張市の破綻などが話題となったが、明日は我が身という自治体は枚挙に暇がない。これは都市部でも同様である。毎年、人口が増加する東京都においても増減数は区や市によりメリハリがある。市部においては、立川市などは人口が増えているが、減少が懸念される市もある。23区内も同様で、区による格差は明確だ。23区の再編論も何年かに一度、政治家などの間で浮上する。暴論のようで、人口や税収、公共サービスなどから考えると検討すべきテーマではある。

地方公務員は安定していると思い就職しても、その自治体自体が地盤沈下する可能性がある。実はカチカチ山状態になる可能性があるのだ。

官僚についてもそうだ。官庁に関しても、今後も統廃合の可能性はある。平成では大蔵省、通産省、厚生省、労働省、運輸省などが再編された。内閣府も強化された。このような再統合の動きはあるだろう。

そもそも、官庁に関しては魅力的な職場かどうかという問題がある。よく「東大生の官僚離れ」が報じられる。とはいえ、実際は毎年、キャリア官僚試験においては東大からは300名を超える合格者が出ている。2位の京大とはダブルスコア以上になる年もある。ただ、キャリア官僚合格者にしめる東大生の割合は減っている。この10数年でのピークは平成22年卒の32.5%だったが、現在は20%以下となっている。