「早着」も同じくやってはいけないNG行為

一方、そんな「延着」の反義語として「早着」という言葉がある。意味もまたその逆で、「指定時間よりも早く現場に入る」ことなのだが、トラックの世界において、この早着も同じくやってはいけない行為であることは、世間にはあまり知られていない。

早着がNGだとされる理由は、「荷主の都合」であることがほとんどだ。

現場が1日の作業を円滑に行えるよう、トラックによる搬入は、「朝一番」に集中することが多いのだが、その際、道中が順調で現場に指定時間より早く到着しても、荷主が各トラックを受け入れる順番を細かく決めていたり、到着順にトラックを待たせたり、中には、前のトラックの作業が終わるまで、構内への進入を禁止するところすらある。

「荷主の都合」はそれだけではない。時に「1分単位」で搬入時間を指定してくる中、彼らは「近隣住民への配慮」などから、トラックに「現場近くでの待機」をも禁じる。

さらに、その細かい指定時間を守って現場に到着したとしても、構内作業が遅れれば、後に続くトラックの待機時間(=荷待ち)も長くなり、結果的に彼らはその間、完全に居場所を失うことになるのだ。

早く行っても入れてもらえず、近くでの待機も許されない。近隣住民への配慮はあってもトラックへの配慮がないこうした実情により、搬入先から離れた路上には、深夜に必死の思いで高速を走ってきた彼らの仮眠姿が溢れるのである。

路駐が絶えないのは「改善基準」が一因

トラックドライバーの路駐が絶えないのは、ある「決まり」にも原因がある。それが「改善基準」だ。

この改善基準とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)の略で、他業種以上に不規則かつ長時間労働になりやすいトラック、バス、タクシーなどの運転業に携わる人のために、給与や全体の労働時間に対する一般的な労働基準を定める「労働基準法」とは別に、働き方や休み方、走り方などを細かく定めている規則だ。

業界の性質上、この改善基準にはいかんせん「特例」が多いのだが、ドライバーの基本的原則には、

①4時間走ったら30分休憩(通称「430」)
②運転できる時間は、2日平均で1日あたり9時間以内
③翌日の勤務まで休息時間を8時間取らねばならない
④拘束時間は原則1日13時間以内。最大16時間以内で、15時間を超えていいのは週に2回まで。1カ月の拘束時間は293時間以内

といったものがある。

本来はトラックドライバーを守るための規則ではあるのだが、この義務付けられた休憩によって、彼らはたとえ時間や駐車場所がなくとも、どこかで休憩を「取らねばならなく」なり、むしろ精神的疲労の原因になってしまっているのだ。