手間が省ける法定相続情報証明制度

いままで見てきた一連の相続手続きで何度も必要となる書類が、図に示したものである。まず、被相続人の死亡診断書のコピーに加え、被相続人の連続した戸籍謄本および除籍謄本、被相続人の住民票の除票である。そして、全相続人の戸籍謄本(または抄本)・住民票・印鑑証明は、被相続人が死亡した事実、被相続人と相続人の関係を証明するために不可欠で、死亡診断書のコピーと同じように複数を用意しておきたい。

何度も必要になるので複数枚用意しておきたい書類

「もしも必要書類を1通しか用意していない場合、1つの金融機関で預貯金の名義変更の手続きを終えてから必要書類を返却してもらい、その後で別の金融機関での手続きをしなければならず、時間がかかります」と鈴木さんはいう。

一方で2017年5月からは、「法定相続情報証明制度」も導入された。これは、被相続人と相続人の戸籍謄本や住民票などのデータをまとめて、被相続人と相続人の関係を家系図のような形にした「法定相続情報一覧図」を作成し、あらかじめ法務局に記録してもらう仕組みだ。一覧図の写しは法務局に無料で交付してもらえ、戸籍謄本などの代わりに使える。

そして相続手続きのなかで、しっかりと確認しておきたいのが、先の限定承認・相続放棄で触れた、被相続人の「隠れ資産」と「隠れ負債」の有無だ。

しかし、親が「どこの銀行の口座に、どのくらいの預金があるのか」「預金通帳が、家のどこにしまってあるのか」といった情報がなければ、いざ親が亡くなったときに四苦八苦する羽目になる。そこで銀行や郵便局の通帳、証券会社や保険会社の証書などがないかどうか、故人の家のなかをよく調べてみる。見つからなかった場合、金融機関からの通知がないかをチェックしよう。

万が一、通知がなかったとしても、不安がらないでほしい。図に示したように預金口座を調べる手立てはある。「ゆうちょ銀行の場合は『現存調査』、銀行の場合はいわゆる『全店照会』という方法で、被相続人の口座を探してもらえます。ただし、銀行によっては、全店照会という用語を使わないこともあります」と鈴木さんは話す。

現存調査も全店照会も、相続人(法定代理人を含む)が、戸籍謄本や運転免許証など相続人であることを証明できる書類を持参し、金融機関の窓口に赴いて依頼するのが基本だ。そして口座の有無、口座があった場合は店名や口座の種類、番号を教えてもらえる。ゆうちょ銀行は、貯金残高まで開示してくれるが、銀行は、原則として口座の中身までは答えてくれない。

近親者が残した預金口座を調べる手続き