図表1のケースⅢをみると2019年度に61.7%だった所得代替率は、マクロ経済スライド(※2)によって調整され、2047年度に50.8%まで低下する。そのあとは、マクロ経済スライドが停止し50.8%の水準を維持する。これがこのケースの結論である。

パラメーターとしては経済成長率を比較的高い水準(1.2%)に設定、全要素生産性(※3)が0.9%、物価上昇率が1.2%、賃金上昇率が1.1%などの前提条件を置いている。このケースで日本経済が推移すれば年金財政は安泰であることを示している。

反対にケースⅥのように経済成長率を低い水準(0.8%)に設定、全要素生産性が0.3%、物価上昇率が0.5%、賃金上昇率が0.4%などの前提条件の下では、2043年度に所得代替率が50%に達する。放っておけば2052年度に国民年金の積立金がゼロになる。

パラメーターを変え6通り(ケース1〜ケースⅥ)の試算を行った。これが2019年財政検証の概要である。

(※2)物価や賃金など人口などの変化に応じて年金を一部カットする仕組み。
(※3)生産活動に対する生産要素の寄与度を表す指標

50%を下回る場合は「回避措置」を講ずる

ところで、財政検証の根拠はなんだろうか。法律的な根拠は「国民年金法」にある。この法律のよって政府は「5年ごとに」財政検証を行うことが義務付けられている。そして、「国民年金の一部を改正する法律」(2004年改正)の附則に、「(次の財政検証までに)所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合は、(これを回避するための)措置を講ずるものとする」とある。

簡単に言えば2024年までに、所得代替率が50%を割る可能性があるときは、各種の制度改革を行い、50%を維持するようにしなさいということだ。

だが、2019年検証は前回(2014年)にくらべ数値が改善している。5年後の2024年の所得代替率も60.0%〜60.9%と見込まれ、50%を大幅に上回っている。