東京では常に月間稼働率100%

ホテルが供給過多の中、われわれのアパホテルはありがたいことに東京では常に月間稼働率100%という状況にあります。それは「新都市型ホテル」を掲げ、地下鉄の駅3分以内の交通アクセスのいい都心部に展開してきたからこその結果だと思います。一方で、プールや大浴場、スポーツジムなどの施設が併設された大規模な高級ホテルは、広大な土地を確保しなければならない以上、立地の悪いところに造らざるをえません。でも、辺鄙な山の上にホテルを造っても誰も行かないじゃないですか。ホテルは立地産業なんです。

価格帯の問題もあります。訪日客もいくら海外から来たからといって1泊3万や5万も払ってホテルに泊まる人は多くありません。政府は高級ホテルがたくさんできれば訪日客が増えると考えていますが、見当違いです。

ホテルはいったん造ってしまうと、その先30~40年は使わなくてはなりません。オリンピックや万博といった一過性のイベントをめがけて、政府が補助金まで出して50軒も造らせるのは無計画にもほどがあると思います。イベントが終わった後は経営が苦しくなるのは目に見えており、賛成できません。

政府は多くのスイートルームを配置することを推奨していますが、部屋は狭いほうがいいに決まっています。部屋を大きくすると炭酸ガスの排出量が増えて環境に優しくないですよね。アパは炭酸ガスの排出量を一般都市ホテルの3分の1に抑えています。特に欧米の人々は環境問題に敏感で、求められているのはスイートルームではなく環境に優しいコンパクトな部屋なのです。

アパホテルはコンパクトな部屋に大きな壁掛けテレビや大きなベッドを置き、照明は事務所並みの明るさです。そうすると、ベッドの上で本を読んだり、書類を広げたり、地図を見たりと、ベッドを寝るためだけでなく多目的に使うことができる。照明のスイッチを探すためにいちいち歩き回らなければならないスイートルームよりも、ベッドサイドにスイッチをまとめたほうがずっと使い勝手がいいじゃないですか。

高級ホテルと違い、駅近でリーズナブルなアパホテルは、ビジネスマンから国内観光客、訪日外国人まであらゆる人に利用してもらうことができます。一時的な行事のために後先を考えず補助金を出すくらいなら、もっと有意義な税金の使い方がたくさんありますよ。そもそも、本当に今の日本にホテルが必要な状況ならば、民間が自ら計算して建設を推し進めるはずです。以前は6~7%だった金利も今は0.5%程度にまで下がっている。十分補助金みたいなものですし、それで民間がやらないのなら、それは儲からない投資だということです。

(構成=万亀すぱえ 撮影=横溝浩孝)
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