宣伝戦の世界ですから。欧州はうまいんですよ

【小泉】一種の宣伝戦の世界ですから。欧州はうまいんですよ。自分たちが取り組んでいないところは触れないようにしながら、自分たちが取り組んでいて売れるところは大きく取り上げて世界に発信している。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所へ入社。テレビ東京を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。著書に『起業家のように考える。』ほか。

【田原】欧州の主要国は30年を目標として石炭火力をゼロにすると言ってますね。

【小泉】できるかどうかわからないですよ。そこがまさに欧州や海外のうまいところで、できるかどうかわからなくても、宣言することで評価を買うんです。そして30年のはずが、50年になってできてなくても、「いや、宣言したからここまで来たんだ」と言う。日本は真逆で、できるかどうかわからないことは言いません。

【田原】日本は正直すぎるんだ。

【小泉】真面目すぎる。国際広報戦略という観点からは、このままのアプローチではいけないですよ。真面目なところで評価される部分と、ここは将来的にはこうするという目標はうまく切り替えて考えないと。

【田原】具体的にエネルギー行政を仕切っているのは経産省。僕が幹部に取材したところでは、CO2を減らすために原子力発電所を増やす必要があると言っている。小泉さん、それでいいの?

【小泉】そんなに簡単じゃないですよ。まず脱炭素の軸で言うと、国際社会もそういうふうに見ているという現実はあります。つまりCO2を減らすという観点からいえば、原子力と再生可能エネルギーだと。

【田原】国際社会は原発自体についてはどんな認識?

【小泉】原発についてはあまり触れません。パリ協定の一番大事な要素はCO2で、その観点では原発はネガティブじゃないというのが国際社会の見方ですから。だけど、それこそ日本が解かなきゃいけない難しい問題でしょう。原発事故が起きたらどうなるのかということを、僕らはわかってるじゃないですか。そのリスクを考えたら、脱炭素社会の実現のためだといっても単純に原発推進にはなれないですよ。

だから、原発はできる限り減らす、いまはそう考えています。さらに石炭だってこれから減らさないといけない。原発も石炭も減らすとして、じゃあどうするのといえば、再生可能エネルギーを主力電源化していく。これをいままで本気になって考えてきたかと考えると、まだまだできることはある。

【田原】日本で再エネといっても具体性があるのは太陽光と風力だ。ただ、電力会社は送電線の容量に、太陽光や風力に使える空きはないと言う。