クラスで行ったお金を知る疑似体験

何年か前、うちのクラスで「アクションワールド」という教室内通貨をつくって、お金について学んだことがあります。ちゃんと紙幣をつくって、偽造されないように「アクション銀行」というハンコを押して。

まず、スタートとして子どもたちにいくらか渡し、「アクションワールド」のルールを決めました。例えば、給食当番をやると給料がいくらもらえるとか、2週間に1回「アクション国」の総理大臣選挙を行うとか。徐々にルールが増えていくのですが、その一覧をわかりやすいように壁に貼り、決められたルールの中で、子どもたちが自由に「アクションワールド」を使うのです。

最初は、誰もが簡単にお金を稼げる給食当番に人気が殺到しました。でも、募集人員を決めたので順番待ちをしなければならず、それだけだとなかなかお金はたまりません。最初に決めたルールの中で、一律で住民税を徴収することにしたので、順番待ちをして給食当番をしても、住民税を払わなければいけないので、お金は減る一方で思うようにたまらないのです。

ちなみに、なぜ住民税を徴収するかと言うと、最初のうちはお金を使う機会がほとんどなかったから。給食のお代わりを「アクションワールド」で買わせるわけにもいかないですしね。

「会社」を立ち上げる子が増え始めた

当初は給食当番をひたすら続ける子が多かったのですが、それが儲からないと気づくと、徐々に会社を立ち上げる子たちが増えました。ルールでは、会社をつくるときは助成金を出し、その会社で人を雇うこともオッケーとしました。

ただし、雇った人の給料は、当然自分が払わなければいけません。それでも、なかなか順番が回ってこない給食当番をやるよりは、会社を始めるほうが絶対に面白いと思う子が増え、急激にたくさんの会社ができ始めたのです。

すると、どうなったかと言うと、最初はスーパーデフレが起こりました。なぜなら、まったくお金が回らなかったからです。

会社を立ち上げて画用紙で財布をつくって売った子もいましたが、結局、どの子も一つ買ったらあとは買わない。アクション国では食費などの生活費がなく消費が生まれないため、そもそも消耗品の販売が成り立たないのです。それに住民税を取られて資金繰りが厳しくなりそうだと感じたら、ますますお金を使おうとしない子が増えました。