ギリギリ合格の60点の記者会見

最近の企業不祥事として記憶に新しいのは「吉本興業」の一連の問題である。6000人もの芸人を抱え、政府の事業までも手がける吉本興業を芸能事務所と呼んでよいのかは微妙だが、芸能事務所というものは一般企業などと比較してマスコミ慣れしていると考えていた。しかし、出てくる関係者の発言がすべて裏目に出るという展開になってしまった。

吉本興業幹部の気持ちを忖度するに「自分たちが謝罪する会見などしてもろくな結果にならない」と会見を避けていたものの、世間からの批判が高まって、「もう正直にすべてをさらけ出そう」と記者会見を開いたのだろう。

つまり「どういう記者会見をすべきか」というよりも「記者会見はしない」ということで考えが止まっていたので、どうやって会見を乗り越えるかまでは考えたことがなく、ノウハウも蓄積してこなかったのだろう。

7月の謝罪会見、私はギリギリ合格点とも言える60点の点数をつけたい。「反社会勢力との問題」を起こした芸人とコミュニケーションが取れておらず、また週刊誌等でその芸人の新たなスキャンダルが出てくる可能性がある中で、今後の展開がどうなろうとも記者会見の内容自体で後から責められる展開はほぼないであろうからだ。きっと吉本興業側もそう考えていたのだろうと思う。

とは言うものの、経営者側と所属芸人の言い分が対立して、当初は芸人と反社会勢力との関係の問題だったが、いつのまにか企業のガバナンスに世論の批判が拡大した。マスコミ対応が悪い例のオンパレードといった状態で、部外者の私も悲しい気持ちになったのも事実だ。

悪いのは、吉本興業ではなくて、一部の芸人なのであり、便乗して騒いだ芸人も含め、なぜか正義の味方のような振る舞いをしているのは、呆れる。では、いったい、悪くないはずの吉本興業の何がよくなかったのだろう。簡単に、これまでの状況の変遷を振り返ってみると、そもそもの発端は6月7日発売の「フライデー」が、5年前に所属芸人11人が詐欺グループの忘年会に出席して芸を披露する“闇営業”を行っていたと報じたことだった。