老後資金をどう準備するのが正解なのか。重要なことは想定外のリスクに備えておくことだ。シニアの読者4人の「お金に関する想定外」を紹介しよう。第3回は「夫が急死、企業年金の受給期限が迫る」――。(全4回)

夫が急死、企業年金の受給期限が迫る

【定年時の貯金額】2000万円以下

大手インフラ企業に勤めていた田島さんの夫は60歳で定年を迎え、同じ職場で再雇用された。給料は大幅にダウンしたものの、70歳までは働ける見込みだった。収入は、再雇用の給与と企業年金の2本柱。年金は65歳から受け取る予定だった。企業年金が充実しており、老後の生活には何の不安も感じず、4人の子どもに囲まれ、幸せに暮らしていた。

田島さん(仮名)54歳、女性、パート●家族構成/実母、長女(大学生)、次女(大学生)、長男(高校生)、三女(中学生)

その生活を根底から覆す出来事が起きた。3年前、63歳だった夫がくも膜下出血で急死したのだ。

「出社直後に職場で倒れました。朝はいつものように元気だったのですが」

すぐに病院に運ばれたが意識が戻らないまま1週間が経過し、帰らぬ人となった。会社の健康診断の結果も良好で、予兆はまったくなかったという。

突然の夫の死に混乱しながら、一方で「家計にはそれほど影響はないはず」と田島さんは考えていた。夫の企業年金と遺族年金で、一定の収入が確保できると思っていたからだ。

「しかし、企業年金の部分が誤算でした。主人が生きていれば生涯受け取れたのですが、亡くなってしまうと15年が上限になるしくみだったのです」