現在の75歳は20年前の65歳と同等である

これに対して、「腰痛」は、人類固有の弱点なので高齢者の若返りだけでは改善するのが難しく、改善幅も小さいのではなかろうか。

実は「腰痛」の有訴率は若い年齢でも改善傾向にある。これは産業や職業の構造変化の中で、立ち仕事が減り、座り仕事が増えているためと思われる(デスクワークは腰に良くないと考えられているが、立ち仕事よりはましなのである)。高齢者の改善も若返りというよりそうした仕事環境の変化に伴うものである可能性がある。

そう考えると、「耳がきこえにくい」や「目のかすみ」の動きこそが、ほぼ高齢者の若返りをあらわしていると理解できよう。

上で見たスポーツ庁の体力テストにおける若返り年齢と有訴率から見た若返り年齢の試算を考え合わせると、高齢者の若返りは、10年で5歳前後、若返るテンポでこの20年ぐらいは継続しているといえる。すなわち体の具合からいうと、おおまかに、この20年で高齢者は10歳ほど若返っており、現在の75歳は20年前の65歳と同等であると見なすことができよう。

高齢者間の体力格差は広がっているか?

このように、体力・運動能力から見ても、また体の不調を示す有訴率から見ても、高齢者全体の若返り現象は疑いのないところである。

ただし問題なのは、体力が平均的に向上しているとしても、元気な高齢者と不元気な高齢者とに両極化していないかどうかである。高齢者が平均的に元気になっているからといって、国民全体を対象に退職年齢を強制的に遅くしたり、年金の受給年齢を一律的に遅らせたりしたとするなら、不元気な高齢者にとってはたまったものではないからである。

幸いにスポーツ庁は、高齢者の体力テストの結果について、ばらつきのデータを公表しているので、これを検証してみよう(図表4参照)。