アルコールには依存性がある

もう1つの理由が、酒量が増えていってしまうこと。アルコールには依存性があるためだ。「体が慣れ、同じ酒量では次第に同じ睡眠効果を得られなくなります。そうなると、お酒を飲んでも寝付けない、あるいはすぐに目が覚めるので、さらに深酒をするという悪循環に陥るのです」(同)。それが高じれば、「アルコール依存症」を発症することもある。

ところで、一般に不眠は、うつ病の主な症状として知られているが、最近の研究では、逆に不眠症がうつ病の原因の1つとなっているという説が有力だ。「不眠が続くと、体のさまざまな器官の機能を調整する自律神経の働きにアンバランスが生じ、脳のメカニズムをも乱して、うつ症状を引き起こしてしまうと考えられています」(同)。

そこで、寝酒には「うつ」になるリスクはないかの疑問がわく。泥酔して目覚めた後に、気分がひどく落ち込むことも多いためだ。

しかし佐藤さんは、アルコールを適切に摂取した場合においては、飲酒とうつ病の直接的な因果関係をあっさり否定する。酔った後に気分が落ち込むのも、「うつではありません」と、佐藤さんは言い切る。

「医学的には、アルコールの離脱症状です。早い話が二日酔いです。二日酔いによって精神活動や認知機能が一時的に低下しているだけで、二日酔いがなおれば、気分も晴れます。離脱による不快感が強すぎる場合には、断酒するしかありません」(同)。

ただし、アルコール依存の方のうつ状態には、アルコールによる認知症や脳器質障害の場合があるので十分に注意が必要、とのことだ。

▼深酒後に目覚めて気分があまりに晴れなければ断酒を

佐藤 幹(さとう・みき)
新橋スリープ・メンタルクリニック院長
1997年、東京慈恵会医科大学卒業。2010年、不眠症治療(認知行動療法)の研究にて学位(博士号)取得。
(写真=iStock.com)
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