より高価な新型iPhoneを定期的に投入してきたが…

これまでアップルは、高付加価値製品であるiPhoneのユーザーを増やし、その上で関連サービスやプロダクトから得られる収益を伸ばしてきた。これが、アップルの基本戦略だ。

アップルは日米などの先進国を中心に、より価格の高い新型iPhoneを定期的に投入することで収益を増やしてきた。そのなかで同社がこだわったのは製品原価の低減だ。アップルは優れた素材や部品を世界中から調達できる供給網を整備した。その上で、中国にあるフォックスコン(台湾の鴻海ホンハイ精密工業傘下)の工場で組み立てた製品を世界に輸出してきたのである。

それに加え、アップルは最新モデルの発表と並行して、過去に発表したモデルの値引きを行い、既存製品の割安感を醸成して、売り上げを増やしてきた。足元の国内スマートフォン市場の販売動向を見ると、2017年発売のiPhone 8が、現在も売れ筋の一つになっている。

ただ、今回のiPhone 11の発表を見ると、従来の戦略が機能しづらくなりつつあることが感じられる。

2017年のiPhone X「999ドル」→2019年のiPhone 11「699ドル」

これまでアップルは最新モデルを出すたびに価格を引き上げてきた。それは2017年11月発売のiPhone Xの「999ドルから」がピークだった。その後、2018年9月には同じく999ドルのiPhone XSと同時に749ドルのiPhone XRも発売した。

そして今回、主力機種のiPhone 11は、XR より50ドル安い699ドルとなった。XSの後継機となる11 Proも999ドルと価格は据え置かれた。

最新モデルの価格を引き上げて収益の獲得を狙うというアップルのストラテジーは、徐々に効力を失いつつあるように見える。10日の発表会に関して一部のアナリストは「iPhone以上に、月額4.99ドルでの動画配信サービスの発表のほうが驚き」と指摘していた。アップルのブランドロイヤルティには陰りが感じられる。