一方、日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)は、「オリジナルチキン」の価格を、テークアウト、イートインを問わず、税込み250円に据え置くことを発表しました。それぞれの本体価格(税抜き)はテークアウトが231円、イートインが227円となり、イートインは実質的に値下げをすることになります。

同社が価格を統一したのは、顧客にとってのわかりやすさを重視した結果だと思います。同じ商品でありながら、イートインとテークアウトで価格が異なるのは、消費者の判断を迷わせますし、支払いで1円単位の端数が生じるのも煩わしいものです。一商品あたりの利益を削っても、わかりやすい価格にしたほうがメリットが大きいと判断したのでしょう。

牛丼の松屋フーズも、イートインとテークアウトを同一価格にする方針です。KFCと松屋に共通するのは、業績が好調であること。KFCは昨期増収増益、松屋は6期連続で増収を続けています。業績が好調だからこそ、実質値引きにつながるような戦略が取れるという面はあるでしょう。特にKFCの場合、期間限定ですが500円のランチセットを導入するなど、マーケティング戦略の一環としてわかりやすい価格設定を行っており、それが業績好調にもつながっていると思われます。

値下げで売り上げが激減するケースも

消費者は、価格の変更に敏感です。特に、長く愛用されているロングセラー商品(ブランド)の場合には、値上げや値下げをすると、イメージが低下し、商品ブランドの寿命を縮める可能性があります。

例えば、日清食品の「カップヌードル」は、原材料の高騰を背景に、2008年6月に価格を15円値上げしたところ、売り上げが値上げ前の月に比べて瞬間的に52%減少しました。

値下げでは、アメリカのたばこメーカー、フィリップモリスの事例が有名です。1994年、価格競争を仕掛けてきた競合他社に対抗して、同社の「マールボロ」を値下げしたところ、売り上げが激減。同社の株価も大幅に低下しました。

こうしたコスト増や競合他社の値下げなどの環境変化に対して、競争力を維持する方法は2つあります。

1つは、新しいトレンドを取り入れ、製品をマイナーチェンジすることです。例えば、ロゴやパッケージをリニューアルしたり、「~産100%」など差別化要素を付加して、それと銘打ったりする方法などが挙げられます。イメージの刷新や品質の向上を強調する非価格競争の手段を採用するわけです。カップヌードルは、値上げをした翌年に肉の具材を変えてリニューアルしました。値上げのタイミングでこのリニューアルを行っていれば、売り上げの激減を回避できたかもしれません。