約1年間も部屋に引きこもり、昼夜逆転の生活

ご家族もどうしていいのか分からず、「うつ卒倶楽部」にご連絡をいただきました。ご両親を含めた4人で面談したところ、Aさんは暴力を振るうなんて信じられないほど、優しそうなおとなしいお子さんでした。

「うつ卒倶楽部」では、クライアントの症状や要望に合わせて、月に1回から4回会って、とことん話を聞くところからスタートします。1クール6カ月で、1回の面談は90分から120分。ご本人のいらいらや怒り、不安の原因は何か。互いに顔を合わせて、信頼関係を築きながら、うつからの卒業に必要な手だてを探っていくのです。

Aさんは、約1年間も部屋に引きこもり、昼夜逆転の生活で、外に出ることはまずなかった。また処方された薬も意味がないから、途中で服用を止めており、その間も、お母さんへの暴力はどんどん激しくなっていました。

暴力を振るうきっかけの1つが入浴後です。Aさんは、お母さんに「髪の毛を乾かして」と決まって要求します。しかし自分の思い通りにいかないと、Aさんは、お母さんを蹴ったり、ぶったりなど、暴力を振るうらしいのです

母親が気を失ってしまうほど、激しく、鋭い言葉をぶつけた

驚いたのは、暴言です。お母さんが、私の妻が開くうつのご家族を対象にした女子会に参加したときのこと。お母さんは「Aの思いを受け止めようと暴言でもなんでも聞いていました。でもあるとき言葉のあまりのひどさに失神してしまったんです」と告白したのです。

具体的にどんな暴言だったのか。私の妻は、ほかの参加者もいらしたので、詳しく聞かなかったそうですが、「暴言で失神するなんて」とびっくりしていました。母親が気を失ってしまうほど、激しく、鋭い言葉をぶつけたのでしょう。

面談で話を聞くうち、Aさんとお母さんのいびつな関係が見えてきました。Aさんが、母親の責任で自分は不登校になってしまったと考えていること。さらにさかのぼっていくと、Aさんの不安やいらいらの原因が、高校受験のストレスだったこと。Aさんが「お母さんは私が病気になった責任を取って、ずっと面倒をみなければならない」と話していることが分かりました。誤解を恐れずに言えば、お母さんはAさんの奴隷のような存在になっていたのです。

そうした母娘の関係が分かったものの、当のAさんは「うつ卒倶楽部」のサポートで回復するとは思えなかったのか、2回目以降の面談に顔を見せなくなりました。