焼き栗の糖度を上げることで価格を上げた

【松尾】はい。残りは2018年末に商品化した「焼き栗棒」による売上が15%、「焼き栗ペースト」が5%になります。

画像提供=松尾和広氏
「能登の焼き栗棒」

焼き栗に関しては、現在は150グラム1000円で売っています。先にも言ったとおり、能登に来た当初は250グラム1000円でした。その後、5年ほどして200グラムで1000円、さらに2年後に現在の価格にしました。その間にしたことは、焼き栗の糖度を上げる工夫です。

45日間冷蔵庫で熟成させることで、加糖しなくとも糖度を20にまで上げられます。その状態で急速冷凍し、販売する前に焼くことで糖度を35に高め、それを「プレミアム」と名付けて販売しているのです。

【有坪】ノウハウをオープンにしてもいいんですか?

【松尾】問題ありません。なぜかといえば、「選果」と呼ばれる作業がめちゃくちゃ大変だからです。栗にはクリシギゾウムシという虫が卵を産み付けるのですが、これを手間暇かけて選果することで、商品のクオリティーを保っているのです。正直、この細かな作業を真似したいという人はいないでしょうし、現状では機械化することもできない作業です。

利益率を上げるために「新商品」を作った

【有坪】手間暇をかけてとおっしゃいましたが、もう少し詳しく教えてください。

【松尾】栗農家の通常の選果作業は、ゴロっと栗を転がして、はっきりと目につく虫の穴があったら取り除くというレベルです。それを70代や80代の農家さん自身が、夫婦でやっていたりします。うちの場合は、栗の収穫の時期になると、目が良い人を15人ほど雇って、一粒一粒を確実に選果します。

【有坪】そうした中、なぜ2018年末に新たな商品を作ったのでしょうか?

【松尾】どうすれば利益率が上がるのかを考えた結果です。ひとつは無駄な施肥をしないなど、経費の削減を行いましたが、それにも限界があります。人件費などは下げられませんので。それで、選果の過程で破棄している生栗をなんとか利用できないかと考えました。