症状が劇的に改善する生活習慣の「あわせ技」

「この薬さえ飲めばだいじょうぶ」というような解決法を、英語では「銀の弾丸」と呼ぶ。それ一発ですべてを解決するような「銀の弾丸」が認知症に関してあればよいのであるが、そのようなものはなかなか見つからない。

もともと、脳という複雑なシステムは、1つの方法で劇的によくするということが難しい。ありうるとすれば、さまざまな方法を積み重ねて、いわば「あわせ技」でよい方向に変えることである。

認知症予防につながり、脳を若々しく保つ生活習慣がいろいろと知られている。例えば、ウオーキングなどの運動が効果的である。新しいことに挑戦するのもいいし、積極的に学びをするのもいい。友人をできるだけ多く持つことが望ましいし、雑談を通して絆を深めるのもいい。

バランスのとれた食生活を心がけることも大切だし、十分な睡眠をとることも肝心である。全身を健康な状態に保つことが、脳の健康にもつながる。

このように、認知症の予防として、脳を若く保つ生活習慣はたくさんあるが、そのどれをとっても、1つだけ実行していればそれが「銀の弾丸」になって問題が解決するというわけではない。さまざまなことを、根気よく、バランスをとって長く続けることが大切なのである。

実際、最近の米国における研究では、このような生活習慣の「あわせ技」で、認知症の症状が劇的に改善するケースがあると報告されている。

大切なのは、1つの治療薬など、「銀の弾丸」に頼ったり期待したりするのではなくて、生活を改善するために必要なことを一つひとつ丹念に実行していくことだろう。

「銀の弾丸」は存在しない。しかし、「魔法のじゅうたん」は存在するかもしれない。つまり、さまざまなことを丹念に実行することで、それらが広くバランスよく支えることによって、「魔法のじゅうたん」を浮かすことはできるかもしれない。それは実は「魔法」ではないが、たくさんのことを積み重ねていったときに起こる劇的な変化は、「魔法」のように見えることも確かだろう。