▼目トレ・耳トレ編
太極拳、オルゴールでどうして脳が活性化するのか

ウオーキングよりも脳にいい運動

人生100年時代に突入し、“長すぎる余生”を送ることが予想される昨今、心身ともに健康で長生きしたいとは誰もが願うこと。

アリババの創業者ジャック・マーは80年代から太極拳を習っており、社員にも競技人口が多い。(Getty Images=写真)

しかし長寿になればアルツハイマー病をはじめとした認知症になるリスクも高まる。現在、日本の認知症患者は462万人を超え、30年後には世界でも約3倍になるという予測も。明らかな症状が出たときにはすでに手遅れ。「若い世代でも“明日は我が身”という危機感を持ち、早いうちから予防すべき」と語るのは、白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二医師だ。

それでは、認知症を予防するにはどうすればいいのか。まず挙げられるのが「運動」だ。運動が脳の認知機能の低下を抑制することは数多くの研究で明らかになっている。運動といえば、中高年世代を中心に人気があるのがウオーキング。実際、週1回以上散歩・ウオーキングを行う人口は3300万人を超えるといわれる(笹川スポーツ財団)。しかし、さらに脳に良い影響を与える競技があると白澤医師は話す。

「ウオーキングもいいのですが、脳がより刺激されるのは『球技』です。テニス、卓球、ゴルフなどが代表格。規則的ではない運動が起こることで脳がより活性化されます。また、やっていて楽しいというのも長く続けるという観点からも大切。ウオーキングも、ただ平坦な道を歩くのではなく山道などを歩くトレッキングをオススメしています。複雑な地形を体が調整して歩くので“脳トレ”として有効といえます」

手の指の運動が長寿を生む

とはいえ、球技もトレッキングもハードルが高いという方もいるはずだ。そこで、白澤医師が勧めるのが「太極拳」だ。

「40代を過ぎると多くの人は呼吸がだんだん浅くなります。しかし、深い呼吸ができれば心肺機能に加えて、脳が活性化される。その点で、太極拳は効果が高いといえます。また体のバランス感覚への意識が高まることもいい。高齢の方は転倒による骨折をきっかけに寝たきりになる方が多いですが、そのリスクを軽減することにもなります」