メンタルが弱いからうつ病になるわけではない

どれだけ「心が強い人」「精神的にタフな人」でも、うつ病になる可能性はあります。「心の弱いヤツがうつになるんだ」「自分は強いから、うつとは無縁だ」「本人のやる気の問題だ」

これだけうつ病が社会問題として浸透している昨今においても、いまだにこのような誤った考えを抱き、それを公言する人が少なからずいるのは、大変残念なことです。

患者自身も「自分は弱いから、うつになったんだ」と自分を責め、症状を悪化させてしまいがちです。その背景には、日本の公教育や高等教育において、うつ病をはじめとする精神疾患に関する教育がほとんど行われてこなかったことがあります。

しかし現実には、職場でもっともよくみられる疾患は、うつ病なのです。かつていわゆる産業精神医学は主として身体疾患を扱っていましたが、現在の職場では、うつ病がもっとも重要な疾患なのです。このため、患者個人のみならず、上司、同僚、経営者も、正しい知識を学ぶ必要があります。

あなたの身にも潜んでいるかもしれない

実は、「どんな人でもうつ病になる」可能性を持っています。頭の良し悪しも、性格の良し悪しも、社会的に成功しているか否かも、まして気合や根性とも、無関係です。

岩波明『うつと発達障害』青春出版社

海外のデータによると、うつ病の生涯有病率は15%といわれています。これは「100人いたらそのうち15人は、一生のうち一度はうつ病になる」ことを意味しています。

ある時点での有病率を見ると、およそ3%になります。躁うつ病(双極性障害)なども含めた気分障害全体では約5%となり、この数字はADHDと同程度で、かなりの高率です。日本全体で見れば、500万人から600万人にあたります。

ちなみに、同じく主要な精神疾患である統合失調症の有病率は約1%とされています。

いずれにせよ、うつ病はきわめて「ありふれた」病気であり、誰でもなり得る病気であることは、データから明らかです。

なお、うつ病の発病については、先天的な要素もあれば後天的な要素もあります。

(写真=iStock.com)
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