結婚前の「子供はいらない」が続くとは限らない

私の実感では、ひと昔前まで離婚の理由は「性格の不一致」がトップだった。ところが、最近では「価値観の不一致」に変わりつつある。

たとえば、結婚前は「子供はいらない」と考えていても、まわりに子育て中の友人や知人が増えていくことで子供のいない自分たちに焦りを感じたり、「孫の顔を見せることも親孝行」などと親や親戚からプレッシャーをかけられたりして、「子供がほしい」という考えに変節することもある。

夫婦どちらか一方の価値観だけが変化していくことで、夫婦生活の途中からズレが生じるケースが少なくないのだ。

幸せな人生のためなら「離婚=人生の汚点」にはならない

「子供がほしい」が理由で離婚にいたらないための対策としては、物理的アプローチと精神的アプローチの2つが有効だ。

ひとつは、本格的な危機を迎える前に夫婦で話し合い、定期的に価値観の軌道修正を行う方法。「以前の自分はこう思っていた。でも、最近はこんな考え方もアリだと思うようになったが、どう思うか?」というようなソフトな形で本音を伝えることで、いきなり結論を出す前に、夫婦の将来像を大切にしながら可能性を探ることができるようになる。

もうひとつは、「人の価値観は変わるものだという認識を持っておく」というもの。特に妻が年上で年齢差のある夫婦は要注意。夫婦の関係は時間とともに成長していくものだが、妻が年上の年の差婚の場合、歩調にズレが生まれやすい傾向があるからだ。年齢や経験により自分の価値観が変わることもあるように、パートナーの価値観が結婚当初と比べ180度変わることもあると、覚悟しておく必要があるだろう。

子供の有無だけが幸せの尺度を測るものではないことはたしかだが、離婚すべきか夫婦関係を修復すべきかで迷った時は、「夫婦がそれぞれ幸せになるための道は何か?」を基準に考えるのも手。それがたとえ「離婚」という結論であっても、「幸せな人生を過ごしていくために必要な経験のひとつ」ととらえるならば、離婚は「人生の汚点」ではなくなるからだ。

岡野 あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。
(写真=iStock.com)
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