重要なのは受験生・学生の選択を信じることだ

学生による授業評価はもちろんのこと、適切な大学評価の仕組みもこれまでなかったことが、いまの日本の大学を狂わせている最大の原因だ。

文科省は運営費交付金という1兆数千億円の金を握って、大学側に巨大な影響力を持つ。大学側は、学問の自由! と叫びながら政治家などには散々批判をするのに、金を握っている文科省の担当役人にはまったく頭が上がらない。そして文科省の役人OBを天下りとして迎え入れる。さらに度を越して、文科省役人の子供を不正に入学させた事件が先日話題になる始末。

これだけ多額の税金を、入札を経ることなく直接特定の団体に交付する役所は文科省だけだろう。ここが大学行政の歪みの根幹である。

文科省の役人だけで、大学のあるべき姿など、描けるわけがない。だから、大学運営費交付金は、文科省役人の裁量が及ばないように、基本的には生徒の数に応じて配分するという客観的・形式的基準に変更すべきだ。もちろん大学外の研究団体が、大学の研究内容に応じて交付金を配分する制度も併存させた上で。

大学受験生たちが、自分の将来のことを考えて、必死になって大学を選ぶ選択を重視すべきだ。受験生による大学選びを、授業評価と同じく、大学評価の重要なものと位置付ける。いったん大学に入学した学生の大学間移動ももっと簡単にできるようにする。学生が集まらない大学は、評価の低い大学として、退場させられていくようにする。その場合に廃校なのか、他大学との統合なのかは大学側の選択だ。その際の学生の学習環境を保護する仕組みは役人に考えさせればいい。急に来年に閉校ですというのは禁じて、一定の時間をかけて閉校か統合を進める仕組みになるだろうが、そこは役人が考える話だ。

重要なのは、受験生や学生の選択を信じるということ。受験生たちは、学生や社会人による授業評価を重視するだろう。大学外研究団体による評価も重視するだろう。そうなれば、大学側が学生を集めようと思えば、学生による授業評価や大学外研究団体による評価を常日頃から意識せざるを得なくなる。大学側が自分たちでは良い大学だと認識していても、学生が集まらない場合も出てくるだろう。そうなれば、生き残るためには自校の伝統へのノスタルジーを捨てて、他校との統合を選択しなければならない。

すなわち、大学側は「評価」を気にすることになり、生き残るための手段として、場合によっては統合も含めて必死になって考える。

このように大学が必死になる環境を作ることが、真の大学改革だ。

しかし、このような改革は大学側からとてつもない反発を食らう。そこを大学側と真摯に対峙して、日本の未来のための真の大学改革を実行できるか。いきなり理想のゴールにたどりつくことは難しいだろうが、柴山文科大臣の実行力如何にかかっている。

(略)

(ここまでリード文を除き約2600字、メールマガジン全文は約1万6800字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.156(6月18日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【大学改革(3)】文科省による「授業評価」は第一歩。日本の大学を世界に通用する大学に変えるには?》特集です。

(写真=iStock.com)
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