給料の上がる転職をするには、どうすればいいか。人事・戦略コンサルタントの松本利明氏は「行きたい会社の成長段階を見極め、自分がそこにマッチするかを判断することが重要だ。そうしないと入社しても報酬ラインが上がらず、不本意な転職を繰り返す羽目になる」と指摘する――。

※本稿は、松本利明『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/SIphotography)

あなたの「仕事の値札」はいくら?

「あなたの市場価値は?」と言われると迷うことでしょう。市場価値とはあなたの「仕事の値札」のことを言います。

現在の労働市場の中で、仕事の値札は所属する業界、組織規模、職種、職位などで決まります。自身が持つポテンシャル、スキル、経験、資格で決まるものではありません。あなたの属性と会社の「人材の需要と供給」がすべて一致して初めて、本当の市場価値が分かるのです。

仮にあなたが人事課長をするとしましょう。テレビ局の人事課長なら年収1500万円。でも、ガソリンスタンド会社の同じ役職なら372万円となります。あなたが同じ仕事をしても、業界が違うだけで年収は約4倍の差がでてしまいます。

逆の見方をすると、同じ仕事をするなら高い年収を貰える業界にいた方が、割がいいとも言えます。そう、あなたが高く売れれば、同じ仕事でも市場価値は高くなるのです。

市場価値をあげるのは簡単です。行きたい会社の成長段階を事前に見極め、いまある仕事の値札とマッチングするかを判断すればいいのです。

そこを見誤ると、選んだ仕事によっては報酬が目減りし、延々と転職を繰り返す羽目になります。己の価値を高めるには、「どこで働けるか」が一番の要素なのです。

一体どういうことなのか? 順を追って解説しましょう。

外資系コンサルや投資銀が高報酬になるワケ

市場価値は「人材の需要と供給」に加え、「ビジネスモデルの収益性」との関係でも決まります。ビジネスモデルの収益性とは、一言でいうと「儲かりやすさ」と「安定性」に尽きます。儲かる業界ほど人件費の予算を多く蓄えていることは想像つきますよね。

逆に、どんなに大変な仕事でも儲からなければ人件費を払いたくても予算がないこともわかるでしょう。同じ仕事をするなら、儲かるビジネスモデルの業界や会社の方が美味しく感じるのが普通です。

「安定性」とは、社員の雇用期間とビジネスモデルの安定性を指します。外資系コンサルティングや投資銀行は高年収でないと雇えないし、その人材でないと利益が出せない。ただし雇用期間は比較的短期なので高い報酬になるのです。新卒を成長させるケースもありますが、育成コストがかからない人材を中途採用し、即稼いでもらう方が雇う側も手っ取り早く利益を得られるので、おのずと年収が高くなるのはそのためです。

基本的に定年まで働く業界であれば、育成期間や定年後の退職金まで会社が負担するとなるとその分コストがかかることもあり、報酬水準はあまり高くはあげられません。
 ですから、どんなに儲かっても、そのビジネスの寿命が短いと、その業界の人たち全員に高い報酬を払い続けることは難しくなります。