経済的な危機感を煽ってもひきこもりは解決できない

翻って自分自身のことを考えてみてもどうでしょうか? 人が働くのは「生活のため・お金のため」ではありますが、それは長期的な考え方の話です。朝起きて、「嫌だな」と思いながらも毎日仕事に向かうのは、お金が必要だからというよりも、「急に休んだら職場の仲間に迷惑をかける」「今の業務が遅れないように」ということが頭にあるからではないでしょうか。

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「仕事をする」ということのモチベーションには、もちろん収入もあるのですが、それだけではなく、仲間とのコミュニケーションだったり、達成感だったりするのではないでしょうか。ひきこもりの人が立ち直るとしたら、お金の必要性よりも、自分に自信が持てるようになったり、人と会話をすることの楽しさを感じられたりすることが必要なのではないかと思います。

私はファイナンシャル・プランナーですので、あまり不用意なことは言えませんが、経済的な危機感をあおることが必ずしも解決策とはならない、ということは親御さんに繰り返しお伝えしています。逆に、将来の不安が解消・軽減されることで、本人が前向きに考えることにつながるとの専門家の指摘もあり、そのことをしっかり申し上げるようにしています。

今は、都道府県と政令指定都市には「ひきこもり地域支援センター」が設置されて、相談対応や支援をしており、支援対象も40代以降に広がっています。

収入を得ることよりも先に他人との交流を楽しめるように

今回のご相談のケースでは、ひきこもりの長男はすでに40代。この年齢になると、立ち直りや就業は一筋縄ではいかないかもしれません。すぐに就業=収入を得る、ということを考えるよりも、他人との交流を楽しめるようになることを、当面の目標と考えたほうがよいでしょう。

家計のシミュレーションで安心感が得られたほうが、将来を絶望したり、自暴自棄に陥ったりすることを避けられます。私はそんな提案をご両親にしました。

「そうですね……脅せば立ち直るというものではありませんね。もう40代ですので、簡単ではないと思いますが、それでも社会復帰ができるように、働きかけていきたいと思います」

両親もすでに70代ではありますが、それでも息子さんのことを諦めていません。少しでも状況が良くなるようにと、前を向いています。

(写真=iStock.com)
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