事件直前に丸刈りにしたので、岩崎容疑者だと分からなかった

事件直前、岩崎容疑者は突然、髪を切り、頭を丸刈りにした。犯行への強い決意の表れだったのだろう。

身元確認で写真を見せられた同居中の伯父や伯母は、丸刈りのために岩崎容疑者だと分からなかった。このため神奈川県警は岩崎容疑者の指紋を採取し、自宅に残っていた指紋と照合するとともにDNA鑑定も実施した。身元確認は手間取り、12時間以上もかかった。

神奈川県警が家宅捜索に入ったところ、岩崎容疑者の自室は日中でも薄暗く、漫画本やゲーム機が散らかっていた。思想性の強い書物や偏向した趣味をうかがわせるようなものはなかった。遺書もなかった。結局、押収されたのは犯行に使ったとみられる包丁の空き箱やノート、本、キャッシュカードなど計約30点だけだった。犯行時にはいていたジーンズのポケットには現金10万円が入っていた。

岩崎容疑者は28日午前7時40分ごろ、カリタス小学校のスクールバスを待っていた児童らを柳刃包丁2本で襲い、その直後に自刃した。なぜ、20人もの児童らを殺傷したのか。類似事件の再発防止のためにも、犯行の動機の解明は欠かせない。

元農水次官の長男刺殺事件の動機にも影響

岩崎容疑の事件は波紋を広げている。

たとえば、農林水産省の元事務次官の熊澤英昭容疑者(76)が、44歳の長男を刺して逮捕された事件だ。6月1日、東京都練馬区早宮の自宅で、熊澤容疑者は長男を包丁で刺して死亡させた。警視庁は熊澤容疑者を殺人未遂の疑いで逮捕し、3日には容疑を殺人に切り替えて検察庁に送った。

これまでの調べによると、熊澤容疑者は「長男は引きこもりがちで、家庭内暴力があった」と話していた。その後の調べに対し、「川崎の殺傷事件を知って自分の息子も周りに危害を加えるかもしれないと不安に思った」と供述している。

霞が関の官庁で事務方トップの事務次官まで務め上げた人物が、わが子を殺す事件は何とも悲惨である。これまで報じられた供述によれば、岩崎容疑者の事件が引き金を引いたことになる。

ネットでは「ひきこもりは悲惨な事件を引き起こす」「ひきこもりの人間は犯罪予備軍だ」という非難の声も聞こえるが、そう考えることに沙鴎一歩は反対である。