「何か話をしないといけない」──。そう焦れば焦るほど、気の利いた話題が見つからないもの。そんなときのベストな解決法を、場をつなぐ3人の達人たちが伝授する。

話が途切れるのがつらい人、沈黙が耐えられない人に贈る

「話の間にまつわるしくじりのことを、落語の世界では『間抜け』と呼びます。落語は『会話を継続させて最終的にストーリーを完成させてきた芸能』であるわけですが、ビジネスパーソンにとっても『会話の継続力』は重要でしょう。それなのに、なぜ間が持たないのか? それは相手との“距離”を縮めるための事前準備が足りないから。まず、相手を知る。そして、相手と自分との間の共通の関心事や話題が何かを考える。そうやって探し当てた『共通言語』をきっかけにお互いの気持ちが通じ合い、話が進んでいくのです」

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こう語るのは、慶應義塾大学卒の初めての真打ちとなった落語家の立川談慶さんである。

談慶さんが弟子として入門したのは立川談志師匠。その落語の世界において、笑福亭鶴瓶師匠をはじめ名人といわれる落語の師匠は、地方で落語会があると早めに現地に入る。そして、その土地の特徴や話題になっていることなどを探り、それをネタにお客さまの心をわし掴みにしたうえで、自分の落語へ一気に引き込んでいく。

「段取り八分、仕事二分」という言葉があるが、普段の会話においても事前準備の重要性は同じ。準備が万全であれば、心の余裕も生まれて、「何を話そうか」と焦ることもなくなる。

会話の断絶イコール人間関係途絶の恐怖

なぜ人は話の間が持たないことを恐れるのだろう。その疑問に明快な答えを示してくれるのが、著書の『誰とでも15分以上 会話がとぎれない!話し方』のシリーズが累計110万部超のベストセラーとなった野口敏さんだ。

「間が持たない、会話が続かないことによって、相手の方との人間関係が途切れてしまうことへの“恐怖感”が背景に存在するからです。本来、会話はその人の想像力から生まれてくるもの。しかし、表面的な言葉だけを聞いて何とかしようとしても、『そうですか』としかいえません。次第に『相手に嫌われるのでは』という恐怖感から緊張が高まり、ますます想像力がしぼむ悪循環に陥ってしまうのです」

その創造力を活用しながら会話を進めていくことを野口さんは「映像コミュニケーション」と呼んでいる。相手の話からだけではなく、自分が「したこと」「思ったこと」「話したこと」などから話題を探してもいい。具体的にそれらのシーンを思い浮かべてみると、その映像には言葉で表現する以上に情報が多く含まれており、そのなかから自分が一番印象深いものを話題にしたらいいのだ。