東京駅周辺の人の流れを変えるかもしれない

東京駅周辺の商業施設と差別化を図る意味でも、日本橋に誠品生活を持ってきたのはベストチョイスと言えるだろう。コレド室町テラスが、ブランド品や高級品を取り扱うテナントを集めてしまうと、東京駅の反対側にある丸の内の商業施設とバッティングしてしまう。また、同じエリア内にある三越とも客層がかぶってしまう恐れも出てくる。そこで、あえて体験型の「買わない」ことを目的とする誠品生活を迎え入れれば、コト消費に興味を持つ若い世代を惹きつけて、東京駅周辺の人の流れを大きく変えることができるかもしれない。

また、蔦屋書店というコンテンツの賞味期限も、今回の誠品生活の誘致に大きな影響を与えているように思われる。代官山に蔦屋書店がオープンした際は大きな注目を集めたが、さすがにこれだけ全国に乱立してしまうと、蔦屋書店が集客力のある真新しいコンテンツとは言いにくい。

仮に新しくオープンするコレド室町テラスに蔦屋書店ができると言われても、トレンドのアンテナが高い丸の内のOLやサラリーマンには、「また蔦屋書店か」と思われてしまっても致し方ない。手ごわい消費者が集まる日本橋だからこそ、あえて鮮度の高い誠品生活を持ってきたところは、三井不動産の商業施設運営のうまさを感じさせるところでもある。

長期休暇シーズンに対応できるか

ただ、ひとつだけ気になるのは、このワークショップ型の店舗が、果たしてどれだけコレド室町テラスの顧客作りに貢献できるかという点である。コレド室町テラスが完成していないのでなんとも言えないところではあるが、ひとつのワークショップが1回でさばける客数はせいぜい5~10人程度。夏休みなどの長期休暇シーズンになると、魅力的な体験教室に子供たちが集まる可能性は高いと言える。

そうなると、7月から8月にかけては予約でいっぱいになり、本来の主目的となっていた丸の内のOLやサラリーマンが参加できなくなってしまうことも考えられる。シーズンによって客の流れを一時的に絶たれてしまうことは、顧客離れを引き起こす恐れが出てきてしまうかもしれない。