4年前に筆者が指摘「“お手盛り”の報酬」は実際に行われた

前出の4年前の記事で、筆者はこう書いた。

<内閣府令が求める報酬額の算定方法の開示をとても満たしているとはいえない。しかも他社のベンチマークを参考に最終的には「代表取締役と協議の上、決定する」とあるが、代表取締役はゴーン社長を含めて4人。これでは“お手盛り”の報酬と言われてもしかたがないのではないか>

つまり、今回のゴーン氏の逮捕は、その“お手盛り”が実際に行われていたということの証左となるのではないか。

2018年3月期決算の有価証券報告書に記載された代表取締役は逮捕されたゴーン元会長とグレッグ・ケリー元取締役と西川廣人社長の3人。

実際はゴーン元会長が前出の役員の金銭報酬総額29億9000万円という上限内で各役員への報酬の配分を決める権限を持ち、自身は年20億円前後に決めていたとされる。

しかも、内閣府令で報酬1億円以上の役員についての報酬額の開示が義務づけられると、高額報酬への批判を避けるために約10億円の受領を退任後に受け取れるようにケリー氏に指示していたと報道されている。

写真=iStock.com/joel-t

日産の報酬基準「社員には厳しく、ゴーン氏には大甘」

一連の事実は、株主の信用を損ねるだけではなく、社員の信頼をも裏切る行為である。日産自動車の賃金制度については何度も取材したが、社員の給与はコミットメント(必達目標)などの指標をベースに決められ、極めて透明性の高い仕組みであった。にもかかわらずリーダーのゴーン元会長の報酬は不透明で、自らガバナンスを破壊していたのである。

筆者は2016年3月にゴーン元会長へインタビューしている。

「日産をリードしていく経営者に求められる要件とは何か?」という質問に対し、彼はこう答えた。

「ガバナンスも重要です。ネット環境の普及や各種の規制もあって、何かを隠すことが許されませんし、またできないのです」

今となっては白々しいと言わざるをえない。