そこで私は、やる気を失いがちな下位2割のメンバーを除く、優秀な上位2割と、どっちつかずの中位6割の選手たちに全力を傾けることにしました。なぜあえて下位2割のメンバーと距離を置いたのかというと、彼らは、“あるコツ”を使えば力を発揮することがわかっていたからです。

コツは簡単なことです。まずは距離を置いて、彼らのほうから行動を起こしてくるのを待ちます。そして、どんなささいなことでもいいので、こちらに声をかけてきたら、すかさずその発言を惜しみなく褒めます。最初に紹介した、「承認欲求」と「所属と愛の欲求」を満たしてあげるのです。

実際、そのように「承認欲求」と「所属と愛の欲求」を満たしたことで居場所を見つけたSさんをはじめとする下位2割の人たちは、そこから積極的に行動するようになり、次第に結果を残すようになりました。中にはピンチサーバーとして試合に出場し、チームの劣勢をはねのけるようになったメンバーもいます。

ためらわずに「優先順位」をつける

このように、一見意識が低い人間だと思われがちな下位2割の人間も、リーダーのちょっとした対応次第で大化けさせることができます。逆にいえば、リーダーが少しでも対応を誤れば、下位2割のメンバーはますますやる気をなくし、下手をすれば腐ってしまうでしょう。下位2割のメンバーのモチベーションを引き出せてこそ、チーム全体の成果やパフォーマンスの底上げができる。それが本来のリーダーの仕事であるはずです。

二流のリーダーは全員平等に接しようとして疲弊するものですが、一流のリーダーは接するメンバーに優先順位をつけるのをためらいません。そして優先順位をつけつつも、モチベーションを引き出しにくいメンバーを切り捨てることなく、正しいタイミングで正しい対応をするのです。

鈴木颯人(すずき・はやと)
スポーツメンタルコーチ
1983年、イギリス生まれの東京育ち。Re‐Departure合同会社代表社員。サッカー、水泳、柔道、サーフィン、競輪、卓球など、競技・プロアマ・有名無名を問わず、多くのアスリートのモチベーションを引き出すコーチングを行っている。
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