元凶は病院という組織の「縦割り」だ

「がん見落とし」という医療事故について産経新聞と日経新聞が、社説のテーマに取り上げている。

日経新聞は8月28日付の社説で「がん見落とし問題を改革に生かせ」との見出しを掲げているが、通常、経済関連の社説を大きく扱う日経にしては、珍しく医療問題のテーマを大きな1本社説として扱っている。

日経社説はこう書き出す。

「病院の画像診断でがんの見落としが相次いでいる。検査結果が治療に生かされないのは問題だ。国と医療界が協力して診断の専門医を増やすとともに、診療科を超えた連携を密にし、患者本位の医療へ向けた改革を進めてほしい」

CTという高度な医療装置の画像診断ミスが続いているだけに、専門医とがん患者の主治医のとの連携は欠かせない。しかもその連携は密でなければならない。

日経社説も「見落としはコンピューター断層撮影装置(CT)の診断でがんの疑いありとされながら、主治医が診断報告の詳細を見ずに治療が遅れたケースがほとんどだ」と指摘している。

さらに日経社説は病院という組織の縦割りの壁を問題視する。

「多くは循環器、脳神経、消化器など多数の診療科を抱える大病院で起きた。横浜市立大病院では心臓を調べるためにCT検査を実施し、腎臓がんが写っていたのに医師が気付かなかった」

今年6月に発覚した横浜市立大病院のケースでは、診療科間で情報が共有されず、約5年後に患者(60歳代男性)が亡くなった。どうして診療科同士の連絡ができないのか。

続けて日経社説は指摘する。

「通常、主治医も画像データを見るが、詳細は診断の専門医から後日報告を受ける。循環器内科医なら、まず心臓の血管異常などに注目する。専門外のがんなどには関心が向かず、緊急性が低ければ報告を丁寧に読まないこともあるようだ」

「診断を人手だけに頼るのは限界がある」

日経社説は放射線診断の専門医不足にも言及する。

CT検査はエックス線を使い、コンピューターも駆使し、身体を輪切りにした画像を再構成する装置だ。当然、放射線診断の専門医が分析することになる。

日経社説は「放射線診断専門医は5500人以上いるが、検査数の増加に追いつかない。『2倍の人数が必要』(日本放射線科専門医会・医会の井田正博理事長)という」と指摘する。

日経社説はこうも指摘する。

「最新のCTは首から骨盤まで15~20秒で撮影でき、2000~3000枚の断面画像が容易に得られる。診断専門医一人が1日に数十人分の画像を読む」
「作業の負担は大きく、主治医にその都度、気になったことを直接伝える余裕はない。量をこなすことに追われ、ダブルチェックの徹底も難しいのが実情だ」

1人で1日数十人分の画像を読まなければならないとすれば、主治医との連絡はどうしても薄くなる。せっかく高度な医療装置がありながらそれを十分に使いこなすことができないわけだ。解決しなければならない大きな課題である。