9月20日に投開票が予定されている自民党総裁選挙は事実上の「首相選び」だ。メディアには論戦の活発化を望む声があふれているが、そもそもこの総裁選は必要なのかという視点が欠けている。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(9月11日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

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なぜ安倍さんが首相なのか? それは「顔」として戦った昨年の総選挙で勝ったから

2018年9月10日、自民総裁選/共同記者会見(写真=AFP/時事通信フォト)

安倍晋三首相と石破茂・元自民党幹事長の一騎打ちとなった自民党総裁選。(略)現在の論戦の低調さを嘆く声が、メディアやインテリの中では強いと感じるね。彼らは、安倍さんと石破さんで、日本の進むべき方向性について徹底論戦せよ! と発破をかけている。

でもね、そもそも今回のように国政選挙で現総裁が否定されていない中での自民党総裁選は民主主義を破壊しかねないものであって、今回を最後に止めるべきだ。

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自民党総裁選とは、その字句の通り、自民党という一私的団体のリーダーを決める選挙。企業で言えば、社長を決める株主総会のようなもの。厳密に言えば企業の社長を決めるのは、株主総会で選ばれた取締役会なんだけどまあここはイメージとして聞いておいて下さい。

それと同じく、自民党のリーダーを決めるのは自民党員なんだよね。だから自民党員でない僕は、当然、今回の総裁選において一票を持っていない。多くのメディアやインテリたちは、安倍さんと石破さんは徹底論戦せよ! と言うけど、じゃあ一票を持っていない国民にとって、それはどのような意味を持つのか?

結論として、何の意味もないし、むしろ有害でさえある。

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ところが、ややこしいのは自民党という一私的団体のリーダーは、多くの場合内閣総理大臣(首相)、つまり日本国のリーダーになってしまうということなんだよね。だから自民党員だけじゃなく有権者全体の関心事になるのは当然で、ゆえに安倍さんと石破さんの徹底論戦が必要だ、というメディアやインテリの主張につながっていく。

結局、日本においては、一私的団体である自民党のリーダーを決めるプロセスと、日本の国のリーダーを決めるプロセスとの整理ができていないんだよ。

民主国のリーダーはその国の国民、すなわち有権者が決める。大統領制の国では、有権者が直接投票してリーダーを決める。日本のような議院内閣制の国では、有権者は国会議員を選び、そして国会議員が首相たるリーダーを決める。

日本の国は、現在のリーダーをいつ決めたのか。それは昨年2017年9月に行われた衆議院議員総選挙だよ。このときに安倍さんは自民党のリーダーとして選挙戦を戦い、有権者の多くは安倍自民党に所属する国会議員に一票を投じて、自民党・公明党の連立政権を誕生させ、その結果安倍さんが首相に選出された。ここで有権者の意思はしっかりと示されたんだ。

それなのに、今回の自民党総裁選という一私的団体に過ぎない政党のリーダーを決める選挙で、日本国のリーダーが変更になるとしたら、有権者としてはたまったものじゃない。2017年9月に600億円ほどかけてやった衆議院議員総選挙は何だったのか? となる。

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