第2に、オフバランス与信(金融機関のバランスシートに載らない与信)、いわゆるシャドーバンキングが公式統計の対象から漏れている。一般的にシャドーバンキングは、銀行融資以外のルートで資金を融通する信用仲介機能である。その規模が歯止めなく膨張し、銀行自身も深くかかわっているために、システミック・リスクを引き起こしかねない。ここでは、「銀行理財商品」と「委託融資」、「信託融資」の3つをシャドーバンキングとして扱う。

銀行理財商品とは、銀行が個人や企業向けに販売するリスクの高い金融商品の一つであり、預金よりも高利回りが期待できるため、人気が高い。政府が不動産や石炭など過剰生産が問題となっているセクターに対して融資規制を強めると、銀行はこれらのセクター向けの融資を縮小する代わりに、銀行理財商品で資金を集め、オフバランス(簿外取引)勘定を通じてこれらのセクターに資金を融通した。結果的に、銀行は自らのバランスシート上の融資資産を、銀行理財商品の投資家に移転してきた。

問題は、銀行が理財商品に対して「暗黙の保証」を与えていることだ。本来であれば、銀行理財商品がデフォルトすると投資家に損失が生じる。しかし、実際には銀行が投資家に対して損失補てんを行っている。もし、何かしらのショックによって景気が大きく悪化し、銀行理財商品のデフォルトが多発すると、それを多く扱ってきた銀行ほど、経営が悪化することになる。

企業から企業への融資を、銀行が仲介している

委託融資は、銀行を仲介役として企業が他の企業へ貸し付けを行うことであり、本来であれば企業が融資条件を決めて銀行に委託するものの、実態的には銀行が貸付先や用途、金額、金利などを決める。このように、委託融資も実質的には融資資産を銀行のバランスシートから企業のバランスシートに移転するものである。

銀行が融資資産を信託会社のバランスシートに移すなか、信託融資も急拡大してきた。3つのいずれの形態も、銀行自身が深く関わっているだけに、それらによって仲介された資金の返済が滞ると、銀行に損失が発生する可能性が高い。

第3に、当局が金融機関に不良債権の認定基準を守らせ、十分な監督責任を果たしているか疑問である。2017年まで、銀行の監督管理を担う機関は、中国人民銀行と銀監会であった。金融機関は銀監会に対して、定期的に不良債権額などの経営状況を報告することになっていた。必要に応じて、銀監会は金融機関に対してより詳細な検査を行うことになっていた。

もし、この仕組みがきちんと機能していれば、不良債権比率の公式統計はより高い数字になっていたとみられる。中国において、金融監督当局と金融機関の距離感は、往々にして近くなりすぎる。なお、2018年3月には、金融監督の強化をねらいに、銀監会は保険監督管理委員会と合併した。さらに、現行の体制では十分にリスク・コントロールできないという認識のもと、金融安定発展委員会が新設された。

すなわち、銀行の不良債権の認定基準が緩くなれば、公式の不良債権比率は低下する。また、銀行の不良債権がシャドーバンキングに移し替えられても同じだ。