夫のストレスが積み重なり奥歯が割れてしまった

天真爛漫な雪乃さんはそれでも前向きに頑張ろうとしたのですが、ある日の食事中、奥歯が割れたことが引き金になり、「別居離婚」を決断したようです。雪乃さんは言います。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/AH86)

「歯科医からは、奥歯が割れた原因は虫歯や歯周病ではなく、寝ている間に無意識にかみしめているからだと指摘されました。そして『ストレスが原因かもしれませんね』と言われたんです」

歯科医の何気ない一言が、緊張の糸をプツリと切ってしまいました。18年間の結婚生活で積み重なった我慢や緊張、そして心労が内面にとどまらず、外面の症状として現れたことで、「このままでは心だけでなく体も壊れてしまうのではないか」と青ざめたのです。

夫と妻の関係はやめるけれど、子の父、子の母の関係は続ける。離婚の事実を子供が成人するまで隠し通し、子供の前では「仲良し夫婦」を演じ、一緒に住み続ける。そんな「同居離婚」を選んだ夫婦を私は何人も知っています。

だから、今回のケースでも息子さんへの影響を最小限にとどめるべく同居離婚を選ぶという道もあるよう思えました。しかし雪乃さんは別居離婚しか頭になかったのです。「夫婦のように振る舞うのは無理です」と雪乃さんは言い切ります。

▼歯以外の症状が身体に現れる前に離婚したい

「私の父・母はすでに亡くなっていますが、主人のほうは健在です。本当は主人が(出身地の)実家に戻ってくれるのが一番いいのですが……」

雪乃さんはそんなふうに愚痴をこぼしますが、自分たちが購入した分譲マンションに「妻子だけが残る」という案に夫が納得するとは思えません。また、夫を追い出すことにこだわった場合、その交渉は難航が予想され、いつ離婚できるかわかりません。「とにかく急を要しています。早く話を進めたいんです」。雪乃さんは強く訴えてきました。歯以外の症状が身体に現れる前に解決しなくては。そんな恐怖と焦りがあるようでした。

「やれるものならやってみろって言いたいんです。(夫は家計管理の難しさを)何も知らないくせに!」

時に雪乃さんは私に対して感情をあらわにしました。別居離婚に踏み切る決意をしたのは、最大のストレスが家計管理だったからです。夫と一緒に住んでいる限り、家計管理を押し付けられ、夫の罵詈雑言におびえなければいけません。だから離婚しても「同居離婚」という形では意味がありません。