選挙権とローン契約は18歳、アルコールやタバコは20歳

2018年3月13日、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が閣議決定し、国会に提出された。今国会で成立すれば、3年程度の周知期間を経て2022年4月1日からの施行を目指す。18歳成人は私がかねて提唱してきたものであり、世界の主流も18歳成人。基本的には賛成だが、成人年齢引き下げの決定プロセスには甚だ不満がある。

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振り返れば、きっかけは第一次安倍政権時代の07年5月に成立した国民投票法だった。当時、投票権者を「20歳以上」として法案を固めた自公与党に対して、野党の民主党は投票権年齢を「18歳」に引き下げることを主張した。「都市型政党」といわれた民主党にとって、若い世代を有権者に取り込んだほうが有利になるという党利党略でしかなかったのだが、憲法改正に向けて法案を成立させたい自民党はこれを丸呑みして、「18歳以上」という投票年齢で決着した。

ただし選挙権年齢を「20歳以上」と定めてきた公職選挙法と整合していないという問題があった。そこで16年6月に改正公職選挙法が施行された。これにより国政選挙と地方選挙、最高裁裁判官の国民審査の選挙権年齢が「満18歳以上」に引き下げられて、16年7月の参議院選挙から適用された。

国民投票法から11年、投票権年齢の引き下げから始まった「18歳成人」は、ようやく民法改正にこぎつけた。時間がかかった大きな理由の1つは、18歳成人が複数の役所にまたがる問題だからだ。たとえば選挙権の問題は総務省。刑法や少年法の適用年齢を引き下げるとなると、法務省や警察庁が絡んでくる。現行20歳以上である年金保険料の納付義務が18歳に引き下げられる可能性もある。これは厚生労働省の管轄だ。10年有効のパスポートの取得年齢(現行20歳以上)を引き下げるなら外務省が関係してくるし、ローンやクレジットカードなどの消費者契約の問題は経済産業省の管轄だ。それでも自民党の「成年年齢に関する特命委員会」の提言(15年)などを受けて、民法の成人年齢の引き下げについての論議が高まり、今回の閣議決定、法案提出に至った。

今回の民法改正およびその関連法案では、成人年齢を20歳から18歳に引き下げるほか、女性が結婚できる年齢を18歳に引き上げて、男女ともに18歳に統一。また前述の10年パスポートも18歳で取得できるようになるし、法定代理人である親の同意がなくても18歳からローンやクレジットカードの契約が可能になる。

一方で飲酒や喫煙、競馬などの公営ギャンブルの解禁年齢は20歳に据え置かれる。健康被害や依存症の懸念から慎重論が強かったといわれているが、要は飲酒や喫煙、ギャンブルを政府が促進するような年齢引き下げは具合が悪いということなのだろう。しかし、「選挙権とローン契約は18歳に引き下げてもいいが、アルコールやタバコは20歳を維持しよう」などと案件別に何歳が適当なのかという議論は科学的ではないし、そんな些末な議論の積み上げに意味があるとは私には思えない。