世帯年収540万円の新婚カップル。専業主婦の妻は、夫から毎月32万円の生活費を預かっていたが、まったく貯蓄ができない。夫に問われると「あなたの稼ぎが少ないから苦労してるの!」と怒ることも。どこに問題があるのか。ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏が提案したのは「家計簿アプリ」の導入だった――。

「あなたの稼ぎが少ないから、私が苦労してるのよ」

田中さん夫婦(ともに仮名)は、いわゆる「おめでた婚」の新婚さんです。結婚は半年前。出産を来月に控えていますが、家計相談に訪れたふたりは、「それなりに頑張っているのにお金が全然貯まらない」と暗い顔です。

夫のタカシさん(38)は会社員で、毎月の手取り収入は約37万円。ボーナスは年2回、手取りで各50万円ずつ出るそうです。妻のアイさん(33)は妊娠・結婚を機に退職し、今は専業主婦。「子どもが生まれるので家計をしっかり管理して貯蓄を作りたい」と考えていましたが、結婚から半年たっても一向に貯蓄ができません。原因と解決策を知るために家計相談へ来た、ということでした。

家計の状況を確認したところ、アイさんが「袋分け」と呼ばれる家計管理を行っていることがわかりました。

タカシさんは毎月の給料37万円から、自分のこづかいなど「必要経費」の5万円を除いた32万円を生活費として渡しています。アイさんはその32万円を5つの費目ごとに分けてやりくりしていました。

一番大きいのは「口座引き落とし分」の16万円。これは、家賃(管理費込み11.4万円)、水道光熱費(1.6万円)、生命保険料(2.4万円)などで、これは毎月使い切りです。残りの16万円は、4万円ずつ「食費」「雑費」「交際・娯楽費」「その他(日用品など)」の袋に分けます。費目ごとにやりくりをすれば、それぞれの袋にはお金が残り、毎月貯蓄ができるはずでした。

▼食費は月予算4万円をオーバーして「7万円」

ところが現実は厳しいものでした。たとえば先月の「食費」は5.2万円で、これに「外食費」の1.9万円を加えると7.1万円となり、「食費」では足りなくなります。このため違う袋から回してやりくりするのですが、そうすると最終的に何にいくら使ったのかが、さっぱりわからなくなってしまうのです。

ほかの3つの袋「雑費」「交際・娯楽費」「その他(日用品など)」は、食費を上回ることはほとんどありません。しかし、総合スーパーに買い物へ行くと、食料品と日用品を一緒に購入することになるので、そのたびに「食費」の袋と「日用品費」の袋からお金を出して、おつりをそれぞれの袋に戻さなければなりません。その作業は極めて煩雑。残金と袋の中のお金が合わなくなることもしばしばでストレスもたまりました。

妊娠中で精神的に不安定だったからでしょうか。アイさんはタカシさんに「あなたの稼ぎが少ないから、私が苦労してるの。もう、やってられない!」と食ってかかることもあったそうです。