破綻から3年。国内3位の航空会社スカイマークが業績拡大を続けている。2017年3月期は67億円の営業黒字で、今期も好調だ。なぜ同社はよみがえったのか。経営陣がこだわるのは「1位」をとること。2017年度上期には定時運航率で国内11社中1位になり、今年4月にはシェア1位の神戸空港で入社式を実施した。その戦略の狙いとは――。
スカイマークが神戸空港で開いた入社式の様子。中央がスカイマークの佐山会長。(撮影=三宅玲子)

めざさずに「富士山の頂上」に登った人はいない

「富士山の頂上には、『富士山に登ろう』と考えて、頂上をめざしてきた人しかいません。『1位』も同じです。めざさない限り、『1位』になることはありません。一つひとつ、みんなで力を合わせて『1位』をめざしていきましょう」

国内3位の航空会社スカイマークの会長・佐山展生は、新入社員にそう語りかけた。4月2日、神戸空港の格納庫で行われた入社式でのことだ。

スカイマークは、1996年、寡占状態だった航空業界で国内初の新規参入として設立された。格安料金を武器に業容を広げたが、大型機材購入をめぐって経営危機に陥り、2015年に破綻。その後、佐山が代表を務める投資ファンド・インテグラルが支援に乗り出し、経営体制を刷新した。

破綻前のスカイマークは、前経営者の方針でサービスを極力削減していた。たとえば客室乗務員は乗客の荷物の上げ下ろしも禁じられていた。狙いは格安料金を徹底するためだ。だが新体制になってからは、低価格を維持しつつ、新たに「安心安全」「時間」「温かく誠実なサービス」の三本柱を打ち出した。

このうち「時間」では、佐山がこだわる「1位」を達成している。2017年度上期、発着率の正確さを示す「定時運航率」で11社中1位となった。これは1996年の創業以来初めてのことだ。どの航空会社よりも時間に正確であることは、破綻前の「安かろう悪かろう」というイメージを払拭するものだろう。

記念撮影では、145人の新入社員が佐山と一緒に人さし指を立てて、さらなる「1位」への決意のポーズをとった。

わざわざ神戸空港で入社式をした2つの理由

神戸空港での入社式の様子。新入社員145人は、このあと後ろの飛行機で羽田に飛んだ。(撮影=プレジデントオンライン編集部)

昨年の入社式は、本社のある羽田空港の格納庫で行われた。ところが今年の入社式の場所は神戸空港だった。

なぜ神戸だったのか。理由は2つある。

第1に、同社は神戸空港を「西の拠点」に位置づけ、神戸空港の発着枠(往復60便)の7割を占めている。その神戸空港が、この4月から民営化されるタイミングだったからだ。

運営会社は関西エアポート神戸。同社は、関西国際空港(関空)、大阪空港(伊丹)の2空港を運営する関西エアポートの100パーセント子会社である。そして関西エアポートの主要株主は、リース大手のオリックスと、仏系空港運営会社のヴァンシ・エアポート。関西エアポートの社長はオリックス出身の山谷佳之、副社長はヴァンシ出身のエマヌエル・ムノントである。

山谷と佐山はビジネスでは15年来の付き合いがあるという。スカイマークが神戸空港で入社式を行うことについて、山谷は「直前に知りました。佐山さんらしいな、と思いました」と話す。