アベノミクスの柱である「異次元の金融緩和」の終わらせ方が焦点になりつつある。経済を吹かせるために日銀は400兆円の国債を抱え込むことになったが、その負債は将来返せるのだろうか。元日銀マンで民進党代表の大塚耕平参院議員は「異次元の金融緩和は失敗だった」と語る。野党として掲げる経済政策の中身とは――。(後編、全2回)

※インタビューは2月27日に行った。取材後、民進党は3月30日の両院議員総会、4月1日の全国幹事会で新党結党の方針を決定。現在、希望の党の元民進党議員を中心に、新党結党に向けて動いている。

民主主義を重視する勢力と軽視する勢力

【塩田潮】困難な課題を抱える民進党で代表を引き受けたのは、3党連携を進めて政権交代可能な野党の大きな固まりをつくるためということですが、何が一番厚い壁ですか。

大塚耕平・民進党代表

【大塚耕平・民進党代表(参議院議員)】政策の中身、党運営の方針も、人によって考え方が違う。皆が自分の考え方が一番正しい、正義はこちらにあると言わんばかりの主張をする。だいたい人間は正義を掲げて戦争をしてきました。戦争とはそういうものです。ばらばらになった野党間で、正義はこちらにあると言い張って協調できない人たちは、私には平和主義者とはとても思えません(笑)。今の政府よりも平和的な国の運営を目指す意欲があるなら、政策や意見の違いをことさら強調したり、過去の選挙のけじめが必要だと言い続けていてはだめです。それでは平和主義者とは言えない。その点を自問自答してほしい。そこが最大の壁です。

【塩田】過去を振り返ると、1998年の新進党解党の後、いろいろな流れがあって最終的に民主党に結集し、一度は政権交代実現に成功しました。新進党と民進党は党名も似ていますが、今度も現在の分裂状態を野党結集の新しい出発点とするには、何よりも失われた国民の期待感と信頼感を再醸成するかが最大のポイントです。それには「旗・人・矢」、つまり第一に理念や政策、第二に人材、第三に政権追及力を磨く必要があると思います。

【大塚】「旗・人・矢」のうち、まず旗は、本来、民主主義とは何かということさえ理解してもらえば、「民主主義を重んじる勢力」と「民主主義を軽んじる勢力」という対立軸の下で、「民主主義を重んじる」という旗が確実に立ちます。人材面では、自分が正義だと主張する自己陶酔、自己満足型でないことが期待されます。まとまっていくことが、人材力を発揮するための重要な鍵です。矢は突破力、攻撃力。これは蓄積されたスキルです。枝野代表は大変な突破力を持つ人で、大いに期待したい。希望の党にも玉木代表を筆頭に、突破力を有する中堅議員がいっぱいいる。大きな与党と対峙するとき、突破力を持った仲間が複数の党にばらばらに分かれていては力が発揮できない。だからこそ、3党連携を働きかけているのです。結束しなければ、一人ひとりの突破力を磨いてもあまり意味がない。

【塩田】大塚代表のリーダーシップと政治的魅力で新しい大きな勢力を産み出していくという道は。

【大塚】そう簡単ではない(笑)。私はこの局面で誕生した不条理の産物みたいなものですから(笑)。ただ、不条理の産物にはそれなりの役割があります。「元祖中間派」といわれてきた私の頭の中は、意外に国民のマジョリティに近いかもしれない。他党も含め、関係者には「元祖中間派」のそうした特性を有効に使ってもらうのがいいのではないかと思います。