隣国・韓国で、仮想通貨をめぐる事件が続いている。今年1月には、投資に失敗した30代の男性が追い詰められて命を絶った。事態を重く見た韓国政府は、取引を全面的に禁じる法整備を検討したが、20万人を超える国民がこれに反発した。なぜ韓国人は仮想通貨にのめり込むのか――。
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元金まで吹き飛び、自殺を選んだ青年

今年1月26日、仮想通貨取引所・コインチェックがハッキング被害にあい、約580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出した。3月19日からアルゼンチンで開催されたG20では、仮想通貨の規制案が検討された。こうした数々のニュースにより、仮想通貨の認知度や存在感が日々高まり続けている。北東アジアには、この“新しいお金”をめぐって騒ぎの絶えない国がある。隣国・韓国だ。特に昨年末から今年にかけて、仮想通貨絡みの事件が相次いで発生している。

昨年12月中旬から全体的に暴騰を続けた仮想通貨の価格は、今年1月中旬頃から一気に急落。この動きによって、韓国では自殺者が発生した。投資に失敗し、資産が消し飛んだことを苦に命を絶ったのは、30代男性だった。遺族によれば、元金まで吹き飛んでしまったせいで、心を病んで精神的に追い詰められていたという。警察は遺書を発見できなかったものの、当時の状況を捜査した結論として「仮想通貨投資失敗による自殺」と結論付けている。

ネットでは「漢江に飛び込もう」が流行語に

なお、韓国では同事件以降にも、仮想通貨の暴落を引き金とした自殺、もしくは自殺未遂事件が、すでに数件にわたって起きていると報じられている。こうした状況ゆえに、韓国のネット掲示板では、暴落が起きるたびに「漢江(ハンガン)に飛び込もう」という言葉が流行語めいた使われ方をするようにもなった。漢江はソウルの中心を流れる大きな川だ。日本の掲示板などで時折書かれる「明日、電車が止まる」に近いニュアンスを持つ表現である。

1月下旬に発生した「仮想通貨脅迫状事件」も、韓国の世相を反映した事件だった。事件の容疑者として拘束された29歳の男性は、「旧正月の連休前までに1500万ウォン(約150万円)相当の仮想通貨を指定した電子ウォレットに送金しなければ、家族のうち一人を殺害する」という内容の脅迫状を、ソウル市内の70世帯に無作為に送りつけた。犯行の理由は、生活費を稼ぐため。のちの捜査で、男性は無職状態で金に困っていたことが明らかになっている。