仮想通貨を巡る大規模な詐欺事件も社会問題化している。昨年12月末には、「高収益を担保する」とマイニング機器への投資を持ちかけ、世界54カ国、約1万8000人から合計で約270億円をだまし取った国内詐欺グループが摘発・起訴されている。また3月上旬には、「新しくオープンする仮想通貨取引所に投資すれば何倍も儲けることができる」とかたり、人々から約30億円を詐取した一団が拘束された。そのほかにも、ICO(仮想通貨を使った資金調達手法)がらみの詐欺被害が続々と拡大傾向にある。

韓国大手メディアの記者は「仮想通貨の取り扱いにはかなり慎重になっている」と話す。

「もともと韓国では犯罪のなかで詐欺が占める割合が大きいのですが、仮想通貨はその傾向に拍車をかけている。韓国の大手新聞・メディアでは、仮想通貨の取り扱いにはかなり慎重になっています。企画会議で関連のネタがあがってきても、売買を奨励したり、仮想通貨市場にポジティブなスタンスを取ったりする内容だと、大抵ストップがかかる。政府や役所がにらみをきかせているので、デスククラスの人間たちが『忖度』をしている状況です」

政府は「国内における取引全面禁止」を検討

韓国の政府役人や警察・検察関係者たちは、仮想通貨がもたらす社会の混乱に大きな警戒感を示し始めている。今年1月には、法務部のパク・サンギ長官が「取引所の閉鎖までを視野に入れた規制案を検討している」と、強い語気で規制強化をほのめかした。詐欺被害などを根絶するために、国内における取引を全面的に禁止するよう強力に法整備を進めていくと示唆したのだ。

だがこの動きには、待ったがかかった。国民から猛反発を受けたのだ。いかに詐欺事件が頻発しているとはいえ、韓国国民にとって仮想通貨は人生の一発逆転を狙える夢でもある。特に、出口のない就職難にあえぐ20~30代の若者たちの怒りはすさまじいものだった。パク長官が規制強化を口にした後、仮想通貨の価格が暴落したのだが、これを受けて韓国の若者たちはSNS上に部屋や家具を破壊した写真を掲載。狂ったようにその怒りの感情を拡散した。