夫婦同姓を定めた日本の戸籍制度。橋下徹氏によれば、単に使い勝手が悪いだけではなく見逃せない重大な問題点もあるという。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(2月27日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

(略)

いまの戸籍制度は相続関係を証明するツールとして最悪だ

僕が戸籍廃止と言ったのは、現戸籍制度のことであって、現戸籍制度に代わる新たな身分管理ツールを構築したらいいということです。あらゆる身分管理ツールをなくしたらいいというわけではありません。

写真=iStock.com/RuslanDashinsky

現戸籍の問題点は本籍地、特に出生地の記載があることと、外国人が戸籍を持てないこと。それとやはり家族ごとの管理になっているので、外国人との間に生まれた子供が外国人配偶者の姓にする場合に、どうしても例外的な単独戸籍を認めざるを得ないことなどです。

(略)

ちょっとここは立場の違いなどもあるので、僕の意見が絶対に正解であるということにならないでしょうが、現戸籍制度は相続関係を証明するツールとしては最悪の非効率なツールだというのが僕の感想です。相続関係を証明するのは素人ではほぼ不可能で、これがゆえに、司法書士、弁護士は一定の報酬を受けることができます。ちょっと複雑な家族関係だと膨大な戸籍書類等を取り寄せなければなりません。これもブロックチェーンシステムを活用した新たな身分管理制度にすれば非常に簡易かつ低コストでできるのでしょうが。

これはナンバリング(国民一人ひとりへの番号振り分け)を基にした身分管理ができていないからです。マイナンバー制度に身分管理をリンクさせれば、現戸籍制度など不要です。国籍もマイナンバーにリンクさせれば十分。さらにブロックチェーンを活用した制度にすれば、相続関係の証明などは簡易かつ低コストになるでしょう。

先祖の出生地までわかる差別助長の制度をなぜ止めないか?

さらに現戸籍における本籍地や出生地の記載は被差別地域を確認すること以外に使い道がありません。本人の本籍地は簡単に変えることができますが、本人の出生地や先祖の本籍地・出生地は延々と付いてきます(戸籍を遡って検索できます)。そして本人の出生地や先祖の本籍地・出生地は今の日本社会において提出を求められることがないのに、ずっと戸籍に記載が残ったまま。現住所地、ギリギリのところで本人の本籍地さえ戸籍に記載があれば本人確認としては十分なはずです。にもかかわらず、現代社会において不用な、本人の出生地、先祖の本籍地・出生地情報を戸籍に記載することはもう止めようよという政治的な動きは全くありません。この不要な戸籍記載こそが、悲惨な差別問題を引き起こしているにもかかわらずです。