重要な約束を忘れる。ボーっとしている時間が長い……実家の親の様子がおかしいとき、認知症を疑うべきかもしれない。動揺しては、事態は好転しない。冷静に正しく対応するため、必要な知識をご紹介しよう。第5回は「親への対応は?」――。(全5回)

認知症の親は病気の自覚がなく頑なに受診拒否

親が認知症の症状を示し始めたら、誰もがあわててしまうだろう。しかしまずは冷静になり、医療機関を受診させることがすべてのスタートになる。

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「まず向かうべきは、精神科か神経内科です。大きな病院で老人科や物忘れ外来があれば、専門医がいるはずなので、そこに相談しましょう」(阿部氏)

しかし認知症になると、自分が病気だという自覚がない。そのため、なかには頑なに受診を拒否する人もいる。

「ほとんどの親は自覚がなくても、子供たちがちゃんと説明すれば病院に行きます。ところが全体の2割程度はそれでも受診をいやがる。このように受診を拒む人は、まわりの人の気持ちを一切理解できないため、問題を起こしやすい」(伊古田氏)

認知症が進むと入浴や介護サービスを拒否し、車を運転してあちこちにぶつけても、「俺は運転がうまい」と豪語する者も。嘘をついてでも無理やり病院に連れていきたくなるが……。

「それはNG。もし自分が親の立場で、家族が自分に隠れて相談し、騙されて病院に連れていかれたら傷つくのではないでしょうか。その後の介護期間がギクシャクしたものになってしまいます。ここは性根を据えて、説得するしかない。『私たち家族のために診てもらってほしい』と伝えると、ご本人も勇気が湧いてくるはず」(阿部氏)