不審ドローンが飛んできても撃ち落とせない

プレジデント誌が報じた小型無人機(ドローン)の軍事転用問題だが、ついに米軍高官が日本政府に抗議する事態にまで至った。現在、日本の“ドローン規制法”では自衛官に捕獲・撃墜権限を与えていないほか、防衛省・自衛隊関連施設では東京・市ヶ谷区域以外は飛行を禁止されていない。航空法でも、飛行を禁じているのは滑走路周辺もしくは人口密集地であり、たまたまそれに該当する一部の自衛隊施設のみで、法律を破っても罰金50万円以下が科される程度でテロへの抑止力にはなりづらい。

シリアにあるロシア軍基地を攻撃したとみられる手製ドローン。(SPUTNIK/時事通信フォト=写真)

諸外国ではヤマダ電機といった家電量販店で購入できるようなドローンを使った軍施設への奇襲攻撃が相次いでいる。ウクライナ東部の世界最大の弾薬庫はロシア側のドローンから手榴弾が投下され爆破された。中東ではあらゆる武装勢力がドローンを使用した攻撃をやりあっている。つい先日もシリアにあるロシア軍基地へ、50キロ以上先から発進した手製ドローン13機が攻撃を敢行した。

一方、日本の自衛隊は不審なドローンが基地に飛んできても110番するしかないのが現状だ。さらに、ドローン攻撃に対する訓練もほぼしていないうえ、装備もないため、プレジデント誌は早急な法改正を政府に求めている。

そんな中、米国のハリー・ハリス太平洋軍司令官は小野寺五典防衛大臣との直接会談で現行法では禁じられていない在日米軍基地や周辺上空の飛行規制を要請したと複数の報道機関が報じた。要請はプレジデント誌が昨年11月に報じた直後で、ハリス司令官は「無人機が在日米軍基地へのテロ攻撃の道具に使われかねない」「無人機が軍用機に衝突する危険性がある」とも危惧したという。

沖縄のキャンプシュワブ上空を飛行するドローンがヘリの進路の妨げになっており、衝突するのを回避するために急ターンを余儀なくされているとも朝日新聞は報じている。米軍高官が直接会談で防衛大臣に具体的に要求すること自体が異例だ。