現在の自衛隊には何もできない

小型無人機(ドローン)の脅威が明らかになっている。家電量販店に販売しているような小型ドローンに手榴弾などを積載して爆撃する事例が海外で相次いでいる。

今年3月、ウクライナ東部の世界最大の弾薬庫がロシア側のドローンから手榴弾が投下されて爆破された。中東ではあらゆる武装勢力が小型ドローンを使用した攻撃をやりあっている。背景には安価にローリスクで相手を攻撃できることがある。

誰でも手軽に購入できるドローン。海外では兵器としての利用も相次ぐ。(時事通信フォト=写真)

元米海兵隊大佐、国防大学上席研究員のトーマス・ハメス氏を筆頭とする欧米の戦略家たちは「脆弱な目標であればドローンで大ダメージを相手に与えることができる。駐機中の軍用・民間機、液化天然ガス施設、石油化学製品工場などが危ない」と危惧している。

わが国でも、ドローンで那覇空港の旅客機や燃料車が爆破されれば、自衛隊も使用する滑走路は使用不可能になり、沖縄の制空権は喪失する。停泊中のイージス艦もレーダーを破壊されれば、艦は無用の長物と化す。陸自の離島防衛の切り札たる地対艦ミサイルシステムも同様だ。

しかし、仮にドローン攻撃が企てられていたとしても、本格的な武力紛争に日本が突入していなければ、現在の自衛隊には何もできない。

まず、法的に自衛隊の拠点周辺でドローンの飛行を禁ずる法律がない。官邸ドローン事件を契機に制定された“ドローン規制法”で、飛行を禁じているのは防衛省の本庁がある東京の市谷区域のみ。その他基地上空などでは飛行可能だ。航空自衛隊の弾薬の多くが貯蔵されている「高蔵寺弾薬庫」、陸上自衛隊が地対艦ミサイルを配備する計画の「宮古島駐屯地設置予定地」、海上自衛隊の「舞鶴弾薬整備補給所」も、ドローンを飛ばしても問題はない。