トランプ米大統領の「初来日」が終わった。10月5日から7日までの3日間、メディアは日米首脳会談からコイの餌やりまで、事細かに動静を報じた。だが、ジャーナリストの沙鴎一歩氏は「巧みなパフォーマンスにだまされるな」と警鐘を鳴らす――。
ゴルフをする安倍総理大臣とトランプ米国大統領(写真提供:内閣広報室)

どの新聞も批判の色合いが薄い

まるで「お祭り騒ぎ」だった。テレビ各局は朝から晩まで、ゴルフ接待やワーキングランチ、夕食会の様子などを事細かに報じつづけた。

トランプ米大統領と安倍晋三首相の日米首脳会談である。前回(11月7日掲載)、沙鴎一歩はトランプ氏の巧みなパフォーマンスに「だまされてはならない」と書いた。

新聞各紙をつぶさに読んでいると、批判精神の衰えが気になる。各紙の社説は大丈夫だろうか。そう心配しながら7日付の各紙を読むと、不安は的中した。どこも批判の色合いが薄いのだ。特に社説がこの内容では恥ずかしい。

論説委員は現場を取材して社説を書け

なぜ社説の批判精神が衰えているのか。責任は社説を担当する論説委員にある。新聞記者の大原則は、現場に足を運んで取材し、取材相手の話を理解したうえで、「果たしてそうだろうか」と疑うことだ。だが、論説委員はそれをしない。だから批判力が失われていく。

沙鴎一歩も新聞社で論説委員を担当した経験がある。自戒を込めれば、論説委員を長くやればやるほど「レッグワーク」がおざなりになり、新聞記事やテレビニュースを頼りに社説を書くようになる。

東京新聞までがトランプ氏に好意的?

日米首脳会談について新聞社説がどう書いているか。読売、産経、毎日、東京、日経の冒頭部分を並べると、以下のようになる。

「北朝鮮情勢が緊迫の度合いを増す中、日米の強固な結束を内外に示した意義は大きい。アジア太平洋地域の安定と発展につなげたい」(読売社説)
「大統領の初来日の大きな成果といえよう。2日間にわたり、首脳会談やワーキングランチ、拉致被害者家族との面会、ゴルフなど長時間を共に過ごした成果だ」(産経社説)
「幅広い課題を率直に議論できる日米関係の現状は評価されよう」(毎日社説)
「トランプ米大統領のアジア歴訪だ。その姿勢は歓迎する。戦略的な外交を展開してほしい」(東京社説)
「異例のゴルフ接待には賛否両論あるが、緊密なシンゾー=ドナルド関係が日米同盟をより強固にしたといってよいだろう」(日経社説)

いずれもトランプ氏の来日と日本での言動を評価している。あの過激発言を繰り返したトランプ氏の異常さが、ここでは消えてしまっている。特にトランプ政権を強く批判してきた東京新聞までが「歓迎する」と好意的なのには驚かされた。