神奈川県座間市で9人の切断遺体が見つかった。容疑者はツイッターで「一緒に死にましょう」などと呼びかけて、被害者たちを殺害場所まで呼び出したという。犯行の動機は不明だ。だが被害者のほとんどはツイッターに自殺を望む書き込みをしていた。再発防止には、「ネット自殺」へのケアが必要だ――。

「殺してほしいとは誰からも言われていない」

逮捕された27歳の男は、自殺願望のある若い女性をツイッターで次々と誘い出していた。神奈川県座間市で9人の切断遺体が見つかった事件である。

各紙の報道によると、事件の概要はこうだ。神奈川県座間市のアパートの部屋で、切断された9人の男女の遺体が見つかり、このうちの1人の遺体を遺棄した疑いで、この部屋に住む無職の白石隆浩容疑者(27)が警視庁に逮捕された。殺害現場は家賃2万円のワンルームの男のアパート。9人のほとんどはツイッターに自殺を望む書き込みをしており、男が「一緒に死にましょう」などと呼びかけて誘い出したとみられている。

遺体の身元はまだわかっていない。名前などのわかる所持品が見つかっていないからだ。男は「殺害した9人の名前は知らなかった」「全員、同意を得ずに殺害した。殺してほしいとは誰からも言われていない」などと供述しているという。

白石容疑者の供述によれば、8月から10月のわずか3カ月間に9人を殺したという。しかし犯行の動機や背景などはまだ分かっていない。

各紙は白石容疑者が今年9月からツイッターに「首吊り士」というアカウントを開設し、自殺志願者とやりとりしていたと報じている。プロフィールには「首吊りの知識を広めたい 本当につらい方の力になりたい お気軽にDMへ連絡ください」とあるほか、「本当に困っている方は、ご相談ください」といった書き込みもあり、直接連絡を取ろうとしていたことがわかる。

今回の事件について、新聞社説はどう分析しているのか。毎日新聞と産経新聞が11月2日付の社説で、この事件について書いている。

毎日は「男の犯罪心理を掘り下げよ」

毎日社説は「現代社会が抱え込む、途方もない闇の深さに戦慄を覚える」と書き出し、事件の概要に触れた後、こう主張する。

「男の冷酷さはどこに起因するのか。男は女性への乱暴や金銭が目的だったと供述しているというが、真の動機なのか。被害者の身元を特定し、男の犯罪心理を掘り下げて事件の全体像を解明する必要がある」

毎日新聞の社説(11月2日付)。見出しは「座間で9人の遺体発見 現代の闇に戦慄を覚える」。

女性への乱暴や金銭を奪うという単純な動機では、3カ月に9人を殺害する理由にはならない。それゆれ「真の動機」を掘り起こせと訴えているのだろう。

続いて毎日社説は、先月24日から行方不明になっていた東京都八王子市内の女性が「一緒に死んでくれる人を探している」とツイートしたことが、捜査の端緒となったことに触れ、こう指摘する。 

「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が、容疑者と被害者の接点になった点がこの事件の最大の特徴だろう」

事件を解く鍵はSNSにあるというわけだ。さらにかつて問題化した「自殺サイト」に言及し、「ネット上の有害サイトについては、警察やプロバイダー(サイト接続業者)による監視が比較的厳しく行われている」とする。