一見明白な人権侵害のようだが現実的な悩みもあるんだ

(略)

さて、大阪において、少しニュースで話題になっている事件が発生した。大阪府立懐風館高等学校における生徒の「髪染め強要」事件である。

元々地毛が茶色の生徒が、校則によれば茶髪は厳禁ということで、学校の指導によって黒く染めさせられたというもの。生徒側は地毛だと主張したが、学校側は何度も黒く染めさせ、そのことによって生徒の頭皮もあれてしまい、生徒は不登校になったというもの。

当然、一斉に「こんな学校はとんでもない!」「校則がおかしい!」「生まれながらの髪の色を変えさせるのはおかしい!」「金髪の外国人の生徒も黒髪に染めさせるのか!」「多様性に反する!」「人権侵害だ!」などなどと批判の嵐が吹き荒れている。

この件は大阪府立の高校での事件だから、元知事の僕にも批判が寄せられた。橋下は何をしていたんだ! 橋下が知事だったからこんな学校になったんだ!とかね。

「生まれつきの髪の色は、そのまま認めるべき」「生まれつきのものを変えさせるのは無神経極まりない」「これは人権侵害だ」と指摘するのは当然だし、僕も原則そう思う。

さらに僕は学校生活くらいのことだったら、髪型も髪の色も、それこそ服装も自由にすればいいと思っている。でも現実の行政を預かるとそうは簡単に言えない事情が色々あることを知る。この現実に対する悩みをしっかりと考えて乗り越えた上で、結論を出すのがまさにこれからの時代に求められる問題解決能力なんだ。現実を顧みず頭の中での抽象論、きれいごとだけで結論を出すのは、問題解決にはクソの役にも立たない自称インテリの思考方法だね。

一見誰もが当たり前だと感じるようなことであっても、その奥底には色々な現実的な悩みがあるんだよ。そこを悩まない結論は、実際には使い物にならない。自称インテリの見解が、現実の政治行政でほとんど使い物にならないのは、この現実的な悩みを経ていないからなんだ。